Air Letter空気を学ぶ ② –歴史編–
目には見えませんが、空気は思っている以上に私たちに大きな影響を与えます。
とくに人間が1日に摂取する空気のうち約7割を室内空気が占めているとも言われており、「住まいの空気」の質がいかに大切かがわかります。
時代によってライフスタイルが大きく変化する中、「住まいの空気」はどのように変化したのでしょうか。住まいと空気の関わりについて、歴史を紐解きながら考えてみましょう。
生活様式の変化に見る、住まいと空気の関係
1: かつての住まいは自分で“呼吸”することができました。
「家の作りやうは夏をむねとすべし」―――吉田兼好が徒然草でこのように綴った鎌倉時代、住まいは夏の蒸し暑さ対策を主として建てられました。
今でも神社仏閣に見られるように、柱がむき出しで隙間がたくさんあり、冬のすき間風や断熱性に難はありますが、風通しは抜群。湿度が高くなると水分を吸収してくれる土壁が多用され、室内は気持ちよく保たれました。
畳も同じように水分を吸収する上、素材として使われるい草が室内のニオイや有害物質などを吸着し、空気をきれいにする効果を持っていました。
昔の日本の住まいは、いわば家そのものが自然と“呼吸”できるデザインだったと言えるでしょう。室内に湿気や汚れた空気がこもりにくく、新鮮な空気に満ちていたのです。
2: 気密・断熱性の向上で冬でも暖かく。でも、結露などの課題が…。
昔に比べ、現代の住まいはどうでしょうか。風通しの良さが重視されていた昔の住まいとは異なり、快適性・省エネ性に重きが置かれるように。サッシなどの建築部材が進化し、住まいの気密・断熱性は格段にアップしました。
冬場も暖かさを保てるようになった一方で、窓を閉め切ることで室内に湿気がこもり、寒い時期は大量の結露が発生することも。時期を問わず湿度の高い状態が続くことから、昭和後期にはカビ・ダニの発生や住まいの腐食が問題になり、換気の必要性が注目されるようになりました。
室内には、布製品から出るホコリやダニの死骸、人体から出る毛やフケ、料理などにより発生するニオイや煙などさまざまな空気の汚れが室内に溜まりやすくなります。湿度だけでなく、空気の汚れの排出も住まいの課題に。
3: 化学物質による問題も…。
室内の空気の質は、私たちの健康にとってとても重要です。季節によっては花粉やPM2.5などが換気時に室内に入ったり、衣服に付着して持ち込まれることもあります。また、PM2.5などの粒子の小さいものは、鼻腔で鼻毛や繊毛、分泌液などでからめとられずに、呼吸器の奥深くまで入り込みやすいという問題もあります。
さらに住まいに使われるフローリングや壁紙によっては内装材や接着剤から化学物質が発生するものもあり、建築基準法の改正で、シックハウス対策が義務付けられるようになりました。
健やかに暮らすため「空気」を選ぶ時代。
現代の住まいの「空気」は、私たちが思う以上に汚れています。目に見えない汚れだからこそ、家族が健やかに安心して過ごすためにも、食べ物や水を選ぶように「いい空気」を選ぶことが求められる時代になっていると言えるでしょう。