胃腸症状企画 第3回「水溶性食物繊維が腸内環境を整える!自分の身体に合う食習慣とは?〈その1〉」

監修:大竹 真一郎(おおたけしんいちろう)
ライター:UP LIFE編集部
2021年3月22日 健康

気を抜くと、すぐに太る。
忙しいせいか、肌がぼろぼろ。
アレルギー体質。
気分がふさぎがち…。

よく聞くこれらの症状は、もしかしたら、腸内環境の悪化が、関係しているかもしれません。

腸の調子が悪いと、身体にどのような影響がでるのでしょうか?

また、腸内環境を整えるには、どうしたらよいのでしょうか?

今回は腸内環境を整える食習慣ついて、「おおたけ消化器内科クリニック」の院長 大竹 真一郎先生にお聞きしました。

腸の調子が悪いと太りやすくなるってホント!?

最近、太りやすくなった…。

そう感じて、腸の健康を疑う人はあまりいないかもしれません。

しかし大竹先生は、腸の健康は、広い領域に影響をおよぼすと話します。

「腸の状態が与える健康への影響は、太りやすさや痩せやすさの範囲にとどまりません。
たとえば、肌荒れや、アレルギー体質、そして、抑うつなど目に見えてわかる不調から、心の健康にまで幅広い範囲に影響を及ぼします」と大竹先生。

なぜ、腸とこれらの不調が関連し合うのでしょうか?
中でも、女性が気になる“太りやすさ”と腸内環境という視点で双方の関連性を見てみましょう。

前回の記事で、腸内細菌を健全に保つ「短鎖脂肪酸」のお話をしました。

短鎖脂肪酸は、腸内細菌がつくりだす酪酸や酢酸、プロピオン酸や乳酸のことで、腸内組織のバリア機能を保つ作用や、気持ちを安定させる抗うつ作用のある栄養素です。
中でも女性にうれしい役目として、「食欲の抑制」があるのが特徴。

「腸の表面には、消化に関係する細胞があります。
この細胞が短鎖脂肪酸と結びつくと、食欲を抑制するホルモン(PYY=ペプチドYYチロシン)が分泌されることがわかりました。

また、人は摂取した糖分を血中に生かしたり、脂肪として蓄えたり、筋肉の中にも栄養分として蓄えることができます。

この短鎖脂肪酸は、摂りすぎてしまった糖を脂肪だけでなく、筋肉にも取り込んでくれるので結果的に痩せやすくなるといえます」と大竹先生。

つまり、太るという現象は、運動不足やエネルギー過多(食べ過ぎ)なども関連しますが、腸内バランスが崩れ、腸内細菌が減るなどして短鎖脂肪酸がうまく生成できていないという場合もあるということ。

それでは、実際に腸内細菌のバランスを保つためには、どのような工夫ができるのでしょうか?

腸内環境を整える3つの食習慣

みなさんは、腸内環境を整える方法というとどのようなことを思い浮かべるでしょうか?
ヨーグルトを食べたり、レタスなどから食物繊維を摂るなどを思い浮かべる方が多いかもしれません。

それも間違ってはいませんが、大竹先生は一人一人の体質には差があり、万人に効く食材や食事内容は存在しないといいます。

本質的には、長い時間をかけ腸内環境に良いといわれる食材や食べ方の中から試行錯誤を繰り返し、自分の身体に合う食習慣というのを見つけていくしかありません。

しかし、一般論として、腸内環境を整えるために良いとされる食習慣は以下になります。

  1. 過食や偏食を避ける
  2. オメガ3系の脂肪(具体的には、1日1回、魚を食べる)
  3. 水溶性食物繊維を摂る

そんな中で、今回注目していただきたいのが「水溶性食物繊維」です。

食物繊維がおなかに良いことはみなさんもご存知だと思いますが、大切なのは、食物繊維の中でも「水溶性食物繊維」がポイントだということ。

それではいったい、水溶性食物繊維とはどのようなもので、何に含まれているのでしょう。

食物繊維の中で重要な「水溶性食物繊維」とは?

みなさんは、1日の食事の中で、食物繊維をどの程度摂取できているでしょうか?

食事に含まれる食物繊維の量を理解した上で摂取しているという方は、なかなかいないかと思います。

1日当たりの理想的な食物繊維の摂取量は、男性で19g以上、そして女性で17g以上といわれています。

平成20年の国民健康・栄養調査の概要を見ると、理想値を超えるのは60代の女性のみ。

それ以外の世代の男女は、理想量と比べ著しく摂取量が低いといわざるをえません。

さらにこの数値は、食物繊維全般の数字であり、水溶性食物繊維に注目すると、より摂取量が低い…という可能性もあります。

ここで、一度、食物繊維の種類を整理してみましょう。

水溶性食物繊維とは?

代表的な食材:わかめ、ひじき、大麦など
=わかめやひじきなどの海藻類や、大麦などに含まれる水に溶ける食物繊維のこと。
ネバネバ系食材に多く含まれ、便をやわらかくし、腸内で発酵されると短鎖脂肪酸が生成される。

不溶性食物繊維とは?

代表的な食材:レタス、ほうれん草、大豆
=レタスやほうれん草などの葉物野菜や、大豆に含まれる水に溶けない食物繊維のこと。
便の量を増やしてぜんどう運動を促すが、摂りすぎると腹痛の原因にも。

上記の分類の中には、水溶性・不溶性のどちらも含んでいる食材もあります。

また、大竹先生いわく、水溶性食物繊維のみを摂るのが良いというわけではなく、大切なのはバランスとのこと。

水溶性食物繊維1に対し、不溶性食物繊維は2。
これが、食物繊維の理想のバランスとのことです。

以下は、水溶性と不溶性のバランスに優れた食材です。

  • オクラ
  • ゴボウ(ゆでた状態)
  • アボカド
  • キウイ
  • プルーン
  • 納豆
  • 大麦

普段の食事はもちろん、おやつにもとり入れやすい食材が多くみられますよね!

善玉菌も悪玉菌も必要!?バランスの大切さ

水溶性食物繊維に注目しながら、無理のない範囲で行える食習慣を意識すると、腸内環境が少しずつ改善していくかもしれません。

どんな時も大切なのは、バランスです。

食物繊維だけに気をとられれば、それは新たなストレスを生み、腸内環境の悪化を招くこともあるかもしれません。

前回の記事でも少しご紹介しましたが、不思議なことに腸内細菌も、善玉菌だけではより良い腸内環境を築けないようです。

「消化器疾患を持つ患者さんの腸内環境が、悪玉菌だけで構成されているかといえばそうでもありません。調べてみると、特定の消化器病の患者さんの腸には悪玉菌が少なかったということもあります。

つまり、腸内細菌は、善玉菌だけでなく悪玉菌も必要。
善玉も悪玉もあり、それらに加勢する日和見菌もある。

腸内細菌の多様性こそが、腸内環境を安定させるのです」と大竹先生。

今回は、腸内細菌がつくりだす短鎖脂肪酸に着目し、その短鎖脂肪酸の生成を促すためにメリットのある水溶性食物繊維に注目した食材を解説しました。

次回は、腸内細菌そのものにダイレクトに働きかける、「シンバイオティクス」という食事メソッドについてご紹介します!

ぜひ、おたのしみに!

監修:大竹 真一郎(おおたけしんいちろう)

おおたけ消化器内科クリニック院長。 神戸大学医学部卒業後、数々の病院で1万例以上の内視鏡検査を経験する。また、「日本の医療を良くしたい、患者に寄り添う医師でありたいという」想いから、数々のメディアに出演。著書には「3週間ですっきり腸美人に生まれ変わる30の方法」など。

2021年3月22日 健康

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