おいしいごはんに向き合い続けた開発ストーリー

ライター:UP LIFE編集部
2023年12月1日
食・レシピ

お米の状態や釜の内部を分析し、最適な炊き方を自動で選んでくれる炊飯器ビストロ。ごはんの味にとことんこだわった炊飯器の開発は「おいしいごはんとは何か」、その定義付けから始まりました。読むとごはんが食べたくなる、そんなお話を開発者のお二人に聞きました。

おいしく炊けたサインは表面にできた「カニ穴」

「おいしいごはん」と聞いたとき、どんなごはんを思い浮かべるでしょうか。

「『粒感・ふっくら、その結果カニ穴があいている』ごはんを『おいしいごはん』と定義し、それを目指しました」と話すのは、炊飯器ビストロの「おいしさ」の部分の設計を担当した山中 百合恵さん。

カニ穴とは何なのか。どうしてカニ穴ができるとおいしいごはんになるのか。
山中さんと、炊飯器の機構設計担当の龍田 修さんが語ります。

左:龍田 修さん 右:山中 百合恵さん

なぜカニ穴ができるとおいしい?

写真:カニ穴のできたご飯のイメージ

2023年9月上旬、パナソニックから可変圧力IHジャー炊飯器 ビストロ Vシリーズが発売されました。

山中:せっかく新しい炊飯器を開発するのなら、一人でも多くのお客様に「おいしい」と思ってもらえるようなものにしたいと思いました。

写真:山中さんが話している様子

山中:最近では、ほぐれが良く粒感を楽しめるごはんがトレンドで、好まれる傾向があります。それも意識しながら、「日本人の誰もが『おいしい』と思えるようなごはん」を目指して、商品の開発を行いました。炊飯器ビストロでは、炊き上がったときのごはんのツヤ感、美しい白色、食べたときの触感、甘みと旨みすべてのバランスが整ったごはんを炊けるようにしており、更に最近のトレンドに合わせた、「粒感・ふっくらごはん」が炊けるようにしています。実は、お米業界では、ごはんがおいしく炊けているのかどうかは、炊き上がりを見れば一目瞭然だと言われています。それが、カニ穴と呼ばれる状態です。

写真:カニ穴のできたご飯のイメージ

龍田:カニ穴とは、ごはんが炊き上がった際に、表面にぽつぽつと空いた穴のことを言います。よく「かまどで炊いたごはんはおいしい」と言いますよね。かまどは大火力でごはんを炊くので、強い沸騰力で泡が生じ、その泡がお米一粒一粒の間を通りながら上がっていきます。結果、炊き上がったごはんの表層の面にくぼみのような穴ができるんです。沸騰泡が鍋底から表面に突き上がることで、表層の米が立ち上がったり、いろいろな方向を向いたりします。そんなふうにして、炊き上がった際に表面にできた小さな穴のことを、カニ穴と呼びます。パナソニックでは大火力と独自技術である減圧沸騰による沸騰泡でカニ穴を作ります。

写真:龍田さんが話している様子

龍田:沸騰泡は、お米の間を通って、表面に出ていきます。その際、熱々の泡がお米一粒一粒に熱をくまなく伝えていき、芯までムラなく火が通るんです。お米の芯までしっかり熱が通ると、中のでんぷんが膨潤(水分を吸収し、膨らむこと)し、ほぐれもよく、口当たりもふっくらとしたごはんが出来上がります。カニ穴はごはんを炊く工程で、釜全体にくまなく熱が行き渡った証なのです。

どんなお米でもおいしく炊き上げるために、新開発した調理プログラムとは

写真:炊いたご飯を器に盛るイメージ

同じかまどを使っても、ごはんを炊くときの気温や湿度、保存状態によって、出来栄えは異なります。環境の条件だけでなく、お米の銘柄によっても味わいに変化が生まれます。

どんな環境で、どんな銘柄のお米を炊いてもおいしく仕上がる。ビストロは、そんな炊飯器を目指しています。

かまどで炊いたごはんを炊飯器で実現

龍田:かまどで炊くとおいしいのですが、お米の状態によって水の量を調整する必要がありますし、時間もかかります。

山中:自力で炊くのは難しいです。レシピ通りに炊いても、お米も保存状態、銘柄、気温、天気、含水量など、お米の状態によって仕上がりは変わってくるので、かまどでごはんを炊くときは、常に様子をチェックしないといけません。

龍田:匠の技ですよね。

山中:その通りですね。

ハイレベルなごはんを炊くには、ハイレベルな技術が必要。それでも、毎日おいしいごはんを食べてほしい。そんな想いから、匠の技を持つビストロが誕生しました。

写真:山中さんと龍田さんが炊飯器ビストロを持っている様子

龍田:炊飯器にまかせるだけで、誰もがおいしくごはんを炊くことができる。そんな炊飯器になったと思います。

かまどは、約1000℃を超える大火力によって、おいしいごはんを炊き上げます。
そんなかまどと同等のごはんを、ビストロはどのように実現したのでしょうか。

AIが匠に代わってごはんを炊き上げる

写真:炊飯器ビストロの操作画面

山中:今回、釜の中の状態をセンサーで検知して、約9600通りの炊き方の中から、最適なものを選んで実行するよう、プログラミングしました。よく「9600通りも!?」と驚かれるのですが、様々な気候やお米の状態を想定した結果、たどり着きました。ごはんを炊くときに入れる水の量も、毎回必ず同じ量になるとも限りません。どんな条件のお米でもベストなごはんが炊けるように、試しては食べてを繰り返しました。龍田さんにも、いっぱい食べてもらいましたね。

龍田:そうですね、たくさん食べましたね(笑)。

写真:山中さんと龍田さんが話している様子

炊飯器ビストロには「ビストロ匠技AI」を搭載。お米の状態を検知したビストロ匠技AIが、約9600通りの炊き方の中から火力・圧力機構に指示を出し、ふっくら粒立ちのよいごはんを炊き上げます。

※ビストロ炊飯コース3合において。

加圧と減圧の調整が自由自在にできる釜を開発

龍田:「急減圧バルブ」という機能を搭載しています。あらかじめ、釜内を加圧しておき、タイミングが訪れたら、中のバルブを開いて、急減圧することで、爆発的な沸騰を起こします。高温を一気に渡らせることで、かまどで炊いたような味わいのあるごはんになるんです。

さらに、追い炊き・蒸らしの工程で、高温状態がキープできる「加圧熱風ポンプ」で、お米の芯まで熱を浸透させ、粒感もしっかり感じられるようになりました。

龍田:従来の炊飯器では、後半は釜の中の水分がなくなってしまい、加圧が難しくなってしまう側面がありました。そのようなときでも、加圧熱風ポンプで急速に圧力を上げて、高温を保てるようにしています。

おいしいごはんを毎日食べて、幸せを感じてほしい

写真:龍田さんが話している様子

龍田:急減圧をかけるタイミングが難しくて…。「ここだ」というときにバルブを開けないと、うまく炊き上がらないんです。山中さんに、試作品を「おいしくない」と言われたこともありましたね。

山中:(笑)。

龍田:自分で試食しても「たしかに」と思ったり…。「ここをもう少し改良しよう」など話し合い、みんなで乗り越えました。

匠の技を再現し、ごはんを炊き上げる炊飯器ビストロ。開発者たちは、どうしてここまで「おいしいごはん」にこだわるのでしょうか。

写真:山中さんが話している様子

山中:パナソニックに入社したとき、先輩が開発した炊飯器で炊いたごはんがとてもおいしくて、感動したことがあります。私もおいしさで感動させられるような炊飯器を作りたいと思って開発してきました。たとえば旅館や料亭で提供される炊き立てごはんは、ぜいたくな料理だと思います。そんなぜいたくなごはんを家で毎日食べられたら、日々の食生活をもっと楽しんでいただけると思います。おいしいごはんを炊くことのできる技術をお届けするのは、私たちの使命だと考えています。

お米の状態に合わせて自動調節する「ビストロ匠技AI」搭載の炊飯器

開発者のたくさんの思いが詰まった炊飯器ビストロ。ここからは、炊飯器ビストロについて、さらに詳しく解説します。

いつものお米がふっくら粒感のある炊き上がりに!

写真:ふっくら粒感のある炊き上がりのご飯のイメージ

炊飯器ビストロで炊いたごはんの表面には「お米一粒一粒に熱が伝わった証」のカニ穴が出現。ミシュラン三つ星を16年連続で獲得している日本料理「かんだ」の神田裕行さんが「ビストロは、僕と同じ思想を持った炊飯器」と語るほどに、ふっくら粒感のあるごはんを実現します。

4つの手段でお米一粒一粒に熱を伝える!

炊飯器ビストロは、下記の4つの機能を搭載しています。

  1. 高圧状態から急減圧することで、爆発的な沸騰を起こし、ごはんをおいしく炊き上げる「急減圧バルブ」
  2. 外から空気を取り込んで、釜内に熱風を噴射して加圧・加熱し、粒感アップさせる「加圧熱風ポンプ」
  3. 釜全面を包み込む6段のIHで、大火力をお米の芯まで届ける「全面発熱IH」
  4. 熱効率、軽さ、丈夫さを兼ね備え、6段IHの高火力を余すことなくお米に伝える「ダイヤモンド竈(かまど)釜」

先ほど、龍田さんがお話ししていた急減圧バルブと加圧熱風ポンプは、パナソニック独自の技術です。4つの技術を掛け合わせることで、お米一粒一粒にしっかり熱を伝えます。

お米一粒一粒に熱を伝える4つの手段について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

ビストロシリーズの炊飯器開発者としての思い

写真:山中さんと龍田さんが話している様子

最後に、山中さんと龍田さんに「ビストロシリーズの炊飯器開発者として、プレッシャーはあったのか」訪ねてみました。

龍田:「誰にとってもおいしいごはん」を考えたとき、どうやって実現していくのか、はじめはわからないこともあったのですが「やってみよう」と挑む気持ちのほうが大きかったですね。

山中:プレッシャーは、正直ありました。けれども「おいしいものを食べると笑顔になる」と言われるように、おいしいごはんを届けることで、みなさまに笑顔になっていただけたらという気持ちで、開発を進めました。センサーで検知して、毎回おいしいごはんを炊けるのは、この商品の強みです。今後は、ごはんが食卓の主役になるのでは、と期待しています。

対談者プロフィール

【ソフト担当】調理ソフト課 山中 百合恵
調理科学の視点からごはんの「おいしさ」の設計を担当。
お米の種類・状態によって水分量、加熱時間、熱量など最適な炊き方を日々研究している。

【ハード担当】機構設計課 龍田 修
釜、IH、バルブ、センサーなど「おいしさ」に関わる要素設計を担当。
ソフト部門が開発したプログラムを実現する精度はもちろん、安全性・耐久性・お手入れ性なども追求する。

この記事で紹介した商品

2023年12月1日 食・レシピ

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