女性のQOLアップにつながる!筋肉にアプローチする「骨盤まわりケア」
実は多くの女性に必要!筋肉にアプローチする「骨盤まわりのケア」
「骨盤まわり」というと、婦人科系の話やお産に関するイメージが強いかもしれません。実際にUPLIFEでも産後のケアとして「骨盤まわりのケア」をご紹介してきました。しかし荒木先生は、妊娠や出産歴に関係なくそれらのケアは大切だと話します。
加齢だけでなく、エストロゲンの減少も関係する
「たしかに妊娠や出産は骨盤やそのまわりが大きく変化するきっかけになります。しかし、骨盤まわりといわれる股関節周囲の筋肉や骨盤底筋はあくまで筋肉ですから、腕や脚の筋肉と同じで加齢とともに衰えていきます。しかも最近は、加齢だけではなく、女性ホルモンのエストロゲンの減少による影響もあると考えられているんですよ」
気づきにくい骨盤の変化、その目安とは?
妊娠や出産などのきっかけがないと骨盤の変化には気づきにくいかもしれません。
「たしかにそうかもしれませんね。出産が骨盤や骨盤底筋に負担をかけることや、そのためにケアが必要となることは知られるようになりましたが、実際は妊娠や出産以外でも骨盤まわりは変化します。1つの目安は加齢を感じ始めた頃。くしゃみをした瞬間に尿がもれたり、単なる疲れだとおもっていた腰痛が消えなかったり、性交時の痛みが出るなどがあれば、骨盤周囲が変化してきた兆しかもしれません」と荒木先生。
特にお腹や背中といった骨盤まわりを構成する体幹の筋力低下は、腰痛の悪化などを起こし、QOL(生活の質)にも影響を与えるそう※1。急激に症状が進むわけではありませんが、少しずつ進行すれば、なかなか厄介な状態といえます。
骨盤まわりのケアは多くの女性に必要!
骨盤まわりが変わることに気づかないと、以前のように身体が動かなくなってきたという実感はあっても自分をだましながら無理をしてしまうかもしれません。
「気づきにくいからこそ、骨盤まわりのケアは多くの女性に必要なのだと知っていただきたいです」と荒木先生。
妊娠や出産以外でも変化する「骨盤まわり」とその原因
加齢やホルモンの影響以外に、骨盤まわりの変化の原因はあるのでしょうか?
習慣的な動作や姿勢が原因になることも
「身体に負担の多い姿勢や動作、同じ姿勢が長時間続く方の場合は、要注意。たとえば座りっぱなしや足を組むことが多い人は、骨盤まわりの筋肉に影響する可能性が高いと考えられます。また、リモートワークなどで自宅の環境が自分の身体に合った状態になっていない場合は、さらなる身体の負担を呼ぶかもしれません。仕事中の姿勢は慢性的な疲れを引き起こしますし、疲れた筋肉は本来の機能をうまく発揮できません」と荒木先生。
さらに興味深いのは、若い女性やアスリートといった身体を酷使する環境にある方にも骨盤まわり問題が起こる可能性があるということ。
更年期や高齢女性だけではない!若い女性やアスリートにも多い尿もれ
「骨盤まわりの問題には「尿もれ」があり、驚くかもしれませんが、思春期のアスリートにおける尿もれの有病率は約5割※2という報告もあります。また、アスリートではない20代の女性でも約6割の方が尿もれの経験があるという調査結果※3もあります」と荒木先生。
年齢に限らず確認できる!骨盤まわりのチェックリスト
それでは、骨盤まわりの今の状態を確認するためにはどうしたらよいのでしょうか?
以下は、出産経験や年齢に限らず骨盤まわりの様子を確認できるもの。さっそくはじめてみましょう!
【3つ以上に当てはまれば注意!骨盤まわりの筋肉チェックリスト】
- くしゃみや咳によって、少量でも尿もれの経験がある
- 腕を身体の前で組んで片足立ちをしたとき、どちらかの両脚で2分以上キープできない
- 腰痛がある※4
- 座った状態で腰に両手を当てて後ろを見るように腰からねじると、動きに左右差がある
- 仰向けに寝て片足ずつ膝を伸ばし、かかとを10㎝ほど持ち上げると、上げづらさや重さを感じる
いかがでしたでしょうか?
骨盤まわりのケアをすることで、腰痛や尿もれだけでなく、将来起こりうる加齢による問題の予防につながります。
骨盤まわりは上半身と下半身をつなぐ体幹のつなぎ目として非常に重要です。腹筋や背筋、股関節周辺の筋肉や骨盤底筋をケアすることで、日常動作がより楽に行えるようになります」
「骨盤まわりのケア」は、年齢やライフステージに合わせたものがおすすめ
実際に取り組める骨盤まわりのケアについてもご紹介しましょう。
荒木先生いわく、骨盤まわりの関節、股関節などは身体を支えるにはとても負担が大きいのだそう。
「股関節や膝関節は不安定な構造であり、私たちが動けるのは靭帯や筋肉があるからです。そのためのセルフケアを行うことで日々の生活が変わっていくはずです」
1.深呼吸
仰向けに寝てお腹と胸に手を置き、骨盤底筋を軽く締めてから下腹部から頭の方向へ息を吐く。吐き切ったら一旦脱力し、自然に吸う。再度、骨盤底筋を締めながら下腹部から頭の方向へ向けて息を吐くを繰り返す
2.キャット&カウ
四つ這いになり、膝を腰幅に開いて股関節の真下に膝がくるようにする。また手首は肩の下に置く。骨盤底筋を締めながら吐く息に合わせ背中を丸め、最後に頭を下げてお腹を見る。息を吐き切ったら、軽く吸いながら骨盤から背中を反らせていく。背骨の1つ1つを動かすイメージで行う
3.歩くときのコツ2つ
股関節から脚を後ろに蹴り出すイメージで地面を蹴り出すようにしながら歩く。目線は少し上を、腕は後ろに引くようにする。もちろん歩きスマホなどで下を向きながら歩くのは危険な上、姿勢にとってもNG。
1〜2は自分のできる時に、できる回数を行うのがおすすめです。3は歩く際に意識してみると徐々に身体が変わっていきます。
大切なのは、筋肉をやわらかくしなやかな形に保つこと
ご紹介したトレーニングの効果を高めるためにも、おしりの筋肉は常にやわらかく適度な張り具合いをキープするのが良いそう。
「ストレッチの際に骨盤底筋を意識するシーンがありますが、ギュッと締める時だけでなく、スッと力をゆるめるよう意識してみましょう。また以前にご紹介したお尻のマッサージも生活の中に組み込んでみることをおすすめします」
「人類、ハタチ過ぎたら皆筋トレ!」
上記は荒木先生の座右の銘だそう。骨盤まわりを鍛えることは、多くの女性の健康にとって大切だといいます。
「セルフケアやトレーニングで維持できる筋肉は財産です!トレーニングやストレッチ、マッサージのうち、ハードルが低いのはマッサージかもしれません。私自身もゆったり身体をマッサージなどでほぐすのも好きです。マッサージを行うことで筋肉を柔らかく、しなやかに保つことができますし、トレーニングなどは筋肉の状態が良ければ効果も上がりやすくなります。ご紹介したケアをまずは1つ生活に取り入れて、日々、楽に動けるよう身体づくりをしていきましょう」
監修
荒木 智子(あらき ともこ)
理学療法士・公認心理師/医学博士。現在の主な研究テーマは、産後の心身の回復。身体と心の2つの側面から「女性のwell-being」を追究している。現在、大阪大学学際大学院機構に在籍、一般社団法人SRHR Japanの活動を通し、様々な領域の視点から研究に携わっている。著書(分担執筆)に「専門医からのアドバイス 内診台がなくてもできる女性診療 外来診療からのエンパワメント」(池田裕美枝編集/日本医事新報社)など。
- Hori Y, Hoshino M, Inage K, Miyagi M, et al.: ISSLS PRIZE IN CLINICAL SCIENCE 2019:Clinical importance of trunk muscle mass for low back pain, spinal balance, and quality of life―a multicenter cross-sectional study. Eur Spine J;28:914‒21. 2019
- Rebullido TR, Gómez-Tomás C, Faigenbaum AD, et al.: The Prevalence of Urinary Incontinence among Adolescent Female Athletes: A Systematic Review. J. Funct. Morphol. Kinesiol. 2021, 6(1), 12
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2024年8月5日 健康
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