防災意識を調査! 災害停電経験者から災害時の備えのヒントを学ぶ ―もしもの備え白書―
災害時の備えについての監修:辻 直美(つじ なおみ)
ライター:UP LIFE編集部
2023年7月28日
防災
※この記事は、2021年3月8日に公開された記事を更新しています。
「自然災害は不安だから、備えは必要。でも、何から用意したらいいのか分からない」と多くの方が感じています。そこで、停電経験者と未経験者の合計2,000名に防災意識調査※を実施。災害時の備えの実態や疑問、停電を経験して分かった必要な備えについて、お聞きしました。
「備え始めるタイミングが遅い」という実態が明らかに
まずは「2,000人の自然災害への備えの現状」について見ていきましょう。自然災害への不安について、「不安を感じている」と回答した人は70.1%、さらに「備えは必要」と86.5%の人が回答。一方、実際の備えについては71.1% の人が「できていない」と回答しました。大多数の人が自然災害を不安に感じ、備えが必要と感じているにもかかわらず、約7割の人が備えができていないという結果に。
備えをはじめるきっかけについて、予測できる「台風や大雨・大雪」では、最も多かったのが「テレビ等で防災・災害特集を目にしたとき」で29.4%。一方、予測ができない「地震」では、「直近で地震があったとき」が47.5%と最も高い結果に。実際に地震が発生して「身の危険を感じてから準備をし始める人が多い」という傾向が明らかになりました。
辻先生:
災害が起きてからでは遅いですね…。「自然災害の脅威や備えの重要性」について、テレビやネットから情報は色々と入ってきているのに、「体験しないと自分のことと思えない」方が大半。ギリギリまで用意せずに「自分は大丈夫だろう」と思ってしまう人の心理が関係しているのだと思います。何が原因で停電が起きるかわかりません。予測できないからこそ「いつ起きてもおかしくない」と考え、日ごろからできる対策をしておくことが大切ですね。少しずつ防災を日常にしていきましょう。
災害停電経験者の声から、災害時の備えを学ぼう
では、もしもの事態に備えて、日ごろからどんな備えをしておけばよいのでしょうか。実際に経験していなければ、どんなことに直面し、何に困るのか具体的にイメージしづらいのも正直なところ。自然災害による長時間停電を経験した方々の声をヒントに、できることから取り入れてみましょう。
停電を経験して実感! 準備・所持しておいてよかったもの
停電経験がある人のうち、「備えてよかったもの」は、
1位 「懐中電灯・ランタン」 58.0%
2位 「乾電池・充電池」 41.4%
3位 「レトルト食品・インスタント食品」 39.7%
という結果に。
「懐中電灯が一つあるだけで安心感が違った。電池も余分にあったのでよかったです(40代/女性)」
「地震を経験した時に一番に不足になったのが電池(30代/女性)」
「子供は空腹が我慢できないのでインスタント食品などはとても助かった(30代女性)」という回答が見られました。
停電時は電子決済が使えない! 現金を手元に置いておこう
他にも「現金」や「水」「ラジオ」「モバイルバッテリー」が役立ったという回答も。
「停電すると、クレジットカードやスマホ決裁は当然のようにできないので、現金でのやり取りしかできなくなる(20代/男性)」
「飲用水を定期的に購入していたので、災害時にその水があり助かった(40代/女性)」
停電を経験して、あかりは家族ひとりにつき1灯、さらに1部屋につき1灯の用意
用意しておいてよかったもので上位だった「あかりの備え」について、詳しく見ていきましょう。暗闇の不便や不安をできるだけ少なくするために、どんなあかりをどれだけ備えるべきなのでしょうか。
「あかりの数が多くなかったので、家族は常に同じ場所に待機していなくてはならなかった(40代/女性) 」というように、「あかりは多ければ多い方がいい」という声が多数見られました。実際に必要だと思うあかりの数について、2人家族以上で停電経験のある人の8割以上が、あかりは複数必要だと感じており、「1部屋につき1灯+家族ひとりにつき1灯」もしくは「それ以上」と回答。あかりの確保を強く意識していました。
停電時のあかりにはLEDタイプがおすすめ! 電池のストックも十分にしておこう
また停電経験者は、あかりを選ぶ際に、光の質や電池のもちを意識しています。
「電池の消耗が少ないLEDタイプがよい(50代/男性)」
「電池の消耗が激しかったので、少ない電力で明るくなるものがあれば良いと思った(20代/女性)」
「温かみのあるあかりの方が気持ちが安らぐと感じた(40代/男性)」
辻先生:
複数のあかりを用意しておくことは大切ですね。また、普段の生活から、ランタンなどの持ち運べるあかりを、間接照明として取り入れてみてはいかがでしょうか。明るさの加減や電池の減り方も把握できるので、いざという時に使えなくて困ったということにもなりにくいからです。その観点で、電池の消耗が少なく長時間使えるLEDタイプがおすすめ。最近は、どんなサイズの電池でも、1本あれば使えるライトなど様々なタイプのあかりもあります。
なくて困った! 準備・所持しておけばよかったと後悔したもの
停電経験がある人のうち、「備えておらず困ったもの」については
1位 「モバイルバッテリー」 19.7%
2位 「発電グッズ」 17.0%
3位 「生活用水」 12.8%
という結果に。
「情報を集めようと携帯電話を頻繁に使用したため充電がなくなってしまい、逆に外部との連絡が取れなくなってしまった(40代/男性)」
「簡易トイレや生活用水をためておくべきだったと後悔した(60代/女性)」という回答が見られました。
バッテリーや電池の残量は、定期的な見直しを
さらに、備えていても困った、まさかの落とし穴として、
「思ったよりランタンや懐中電灯のあかりが弱かった。試してみないとわからないと思いました。(50代/女性)」
「モバイルバッテリーや充電池は、使っていなくても自然と消耗してしまう。定期的に確かめてしっかり充電させておく重要性を学びました。(20代/男性)」という回答が見られました。
備えて終わりではなく、実際に使ってみて確認するなど、定期的な見直しをしておくことがいかに大切かということが伺えます。
必要な情報収集・連絡手段の備えとは?
情報の取得や家族・友人との連絡において、最も身近で手軽な手段のスマホ。調査では7割以上の方が「災害時にスマホを使った」と回答していますが、忘れてはいけないのが電源の問題。
長時間停電におけるスマホの電源確保について、停電経験のある人のうち、備えておいたモバイルバッテリーや自家用車で「電源を確保した」は57.5%でしたが、一方で新たにモバイルバッテリーを購入したり、充電ブースまで出向いたなど「自身の備えだけでは電源が足りなかった」が32.3%という結果に。
辻先生:
大切な人たちとのコミュニケーションは大きな安心感につながります。また、刻々と変化する災害情報をタイムリーにキャッチできるかどうかは、ご自身や大切な人たちを守るための鍵に。そんな頼れる存在のスマホを使い続けるために、予備のモバイルバッテリーなどの複数の電源手段を用意しておくことが重要です。
モバイルバッテリーは電池式がおすすめ
モバイルバッテリーは、充電式やソーラータイプなど様々な種類がありますが、停電時に役立つのが電池式のモバイルバッテリー。充電式モバイルバッテリーは蓄電してある分を使ってしまうと、次に充電するまで使うことができず、停電時においては充電するのも困難です。電池式であれば、充電池や乾電池を取り替えれば何度でも使用できるのがポイントです。
停電時、準備していても足りなかったものは?
停電時のあかり確保も、スマホ活用も、十分な電源があってこそのこと。電源の確保に役立つのが、乾電池です。
防災用のストック量の目安は「1人当たり、 3日間で単3形17本以上」。しかし、電池を備えていると答えた人の予備電池の数について「単3形は1~10本」程度と目安を下回りました。また、どのサイズを何本ストックしておけばよいかわからないと答えた人は56.2%と半数以上という結果に。
電池の必要な本数やサイズが把握できていない状況は、停電経験がある人のうち、「準備していたが、足りなかったもの」の1位が「乾電池・充電池」という結果にも表れています。
備蓄用の乾電池は、十分な量の用意と定期的なメンテナンスを
さらに停電時、電池に関して苦労したことについて
「気が付いたらさびついていたり液もれがあったりして使えなかった(50代/女性)」
「電池のサイズが合わなかった…(50代/女性)」などの回答が見られました。備えていても液もれや必要なサイズ違いで使えなかったという声の通り、電池の保存の仕方についてもあまり意識のない傾向が見られます。
辻先生:
災害時は、あるもので代用するという考え方が基本ですが、電池は、他のものには代えがたい。電池だけは、たくさん持っておくことをおすすめしています。使いたい機器の必要なサイズと本数を把握しておきましょう。
乾電池の正しい保存方法
乾電池の正しい保存方法をチェック
せっかくストックをしていても、正しく保存できていないと「液もれ」や「実は使用期限が切れていた!」なんてことも。 正しい保存の方法として、3つのポイントを知っておきましょう。
- 保管場所は直射日光、高温多湿を避ける。
- 使用推奨期限を確認して、期限内に使用を開始する。
- 機器から取り出して、別々に保存する。
よくあるのが、非常用持ち出し袋に入れっぱなしにしてしまうこと。
日常的に使って、ストックを回すローリングストックがおすすめです。少なくても1年に1回はストック状況を見直しましょう。
みんなの備えの疑問に辻先生がお答え!
今回のアンケートでは、実際に抱えている素朴な備えの疑問を募集。特に多かった「まず何から始めたら?」という備え方についてや「乳幼児や高齢者と暮らしているのですが…」という家族別の備え、さらに「忘れがちなものは?」など、辻先生に具体的にアドバイスいただきました。
辻先生:
色々なデータを見てきましたが、いきなり山の頂上を目指すように、防災について“全部やらなきゃ”と身構える必要はありません。迷ってしまう人は、自分が生活する上でなくてはならない・必要だと感じるものを3つ挙げてみましょう。人とのコミュニケーションが大切という方は連絡・情報取得手段の確保。空腹には耐えられないという方は、食料の備蓄から始めてみましょう。このように自分のプライオリティを考えれば、おのずと自分の防災が出来上がってきます。できることから少しずつ積み重ねていきましょう。
防災スイッチが入った方へ、最低限の備えがぱっと確認できる「防災グッズリスト」(PDF:175KB)を使って備え始めてみませんか。
まとめ
災害を身近なものだと感じ、日常的に防災を意識することが、未来に「もしも」が起きたときに、うろたえることなく過ごせることにつながるのだと考えます。今一度ご自身の備えをひとつでも見直すきっかけになれば幸いです。
※防災意識調査
対象者:全国の20~69歳男女 計2,000人
(内1,000人が5時間以上の停電経験者)
調査期間:2021年1月20日(水)~22日(金)
調査手法:インターネット調査
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災害時の備えについての監修
辻 直美(つじ なおみ)
国際災害レスキューナース
一般社団法人 育母塾 代表理事
阪神・淡路大震災を経験し、災害レスキューナースへ転身。看護師歴28年、災害レスキューナースとして26年活動。
国内外30ヶ所の被災地派遣で経験を積む一方で、防災に関する講演やコラム掲載など、活躍は多岐にわたる。
著書『レスキューナースが教えるプチプラ防災』、『レスキューナースが教える 新型コロナ×防災マニュアル』(扶桑社)
*辻の「しんにょう」は「二点しんにょう」です。
2023年7月28日 防災
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