リモコンを超えた価値提供をエオリア アプリ 開発秘話
2017年のリリース以降、「エオリア アプリ」の利用者は順調に増え続けています。
一体なぜここまでユーザーに支持されるアプリとなったのか。
ハードウェアと連携するソフトウェア開発の裏側には、どのような難しさややりがいがあるのか。
エオリア アプリの開発担当者2名に話を聞きました。
取材:2025年7月
岡田 征和
パナソニック株式会社 空質空調社 ソリューション事業開発センター サービス開発・運用部
お客さまに一生に一度きりの体験を届けたい。
赤池 郁也
パナソニック株式会社 空質空調社 ソリューション事業開発センター サービス開発・運用部
誰しもが快適な空間で過ごせることを目指したい。
「リッチなリモコン」から脱却し、サービスとして価値を提供する
—はじめに、現在のエオリア アプリがどのようなもので、どんな価値があるのか教えてください。
岡田:エオリア アプリが誕生した当初は「外出先からエアコンを操作したい」というご要望に応えるのが主な目的でした。しかし今は、お客さまのお困りごとを解決する方向へ進化しています。たとえば、自宅に近づくと自動で運転が始まったり、消し忘れを通知したり。操作の手間をなくし、お客さまが意識しなくても、エアコンが常に快適な空間を準備してくれる。そんな状態を目指しています。
快適帰宅通知
設定範囲内に入ったら、エアコンを自動オン。帰宅したら快適な温度に。
切り忘れ防止通知
外出した時に、エアコンを切り忘れていたらお知らせします。
赤池:アプリを使うことで、これまでリモコンでしかわからなかったエアコンの状態が、より詳細に「見える化」されたのも大きな変化です。現在の運転状況はもちろん、お部屋の空気質や人の検知状況までわかります。そのデータを元に、より快適な使い方をご提案できるのが、アプリならではの価値だと考えています。
空気質表示
エアコンを設置したお部屋の空気の状態を、
3段階で確認することができます。
ひと検知
センサーが人の動きを検知して、反応数をグラフ表示。
反応の有無や多さで、家族の様子がわかります。
—特に反響が大きかった機能はありますか?
岡田:意外なところで好評だったのが、2022年に搭載した「地域の稼働率」機能です。これは、お住まいのエリアでエオリアをお使いの方が、今どれくらいエアコンを運転させているかを表示するものです。「みんなが使い始めたから、うちもそろそろつけようかな」----そんなふうに、特に季節の変わり目には、エアコンをつけるかどうか迷うときの判断材料として使われているようです。これはお客さまの声からではなく、私たち開発側が「こんな機能があったら面白いのでは?」と企画したもので、アプリならではのサービスとして受け入れられた好例ですね。
—開発側からの提案で生まれた機能なのですね。
赤池:はい。以前は、エアコン本体に新しい機能が搭載されるのに合わせて、アプリを「リッチなリモコン」として対応させるのが主な開発スタイルでした。しかし、それではお客さまのお困りごとを解決できません。そこで、お客さまの要望を先読みし、サービスとして新しい価値を提案していくアジャイル開発へと大きく舵を切りました。この「地域の稼働率」は、その新しい開発体制から生まれた最初の機能なんです。レビューで「面白い」といった感想をいただけたときは、開発者として本当に嬉しかったですね。
エオリアアプリでできること
ユーザー起点で考える。外部の視点を取り入れた開発プロセス
—お客さまのお困りごとを解決するというユーザー起点の開発プロセスについて、具体的に教えてください。最近、新たな監視ツールを導入される際に、外部のパートナー企業も交えてワークショップ形式でユーザー体験の洗い出しから始められたとうかがいました。
岡田:正直に言うと、当時は「ユーザーが本当に求めていることは何か」という点で、私たちも手探りの状態でした。加えて、利用者が増えるほど運用コストがかさむという課題もあり、開発者目線だけでは解決策が見えなかったのです。そこで、IoTに知見を持つ社外のパートナー企業の方々に相談し、「ユーザー価値」を原点から見直すワークショップを実施することにしました。
実際にパートナー企業の方々にも参加していただき、お客さまの体験を一つひとつ洗い出していきました。たとえば「アプリで簡単に操作したい」、「部屋が高温すぎるときに知らせてほしい」といったニーズを洗い出し、その場面で「どういう機能があったら嬉しいか」「どこに不便を感じるか」といった意見を、立場に関係なく率直に語り合ったのです。
ワークショップの様子
シングルアクション
従来は3タップ必要だった操作が、ワンタップで起動。
室温みはり通知
室温が31℃以上、もしくは15℃以下になったら自動でお知らせ。
—どのような発見がありましたか?
岡田:もともと私たちは「アプリはエアコンを操作するためにある」と思い込んでいました。しかし、ワークショップで出たのは「エアコンが稼働している状態が見えるだけでも嬉しいし、価値がある」という意見でした。エオリア アプリにおいては、操作するよりも、部屋の空気環境を確認できるという使用用途のほうが価値は高いのだと。開発の内部事情を知らない、純粋なユーザーならではのこの気づきは、私たちの思い込みを覆すものでした。
—そこで、「操作するだけ」のアプリではなく、エアコンの状態を「見える化」する必要性に気づいたと。
岡田:そうですね。その発見を参考にしつつ、私たちの思い込みではなく、実際のデータに基づいて価値を判断できる仕組みづくりに着手しました。まず、お客さまの一連の体験をもとに、サービスや機能の良し悪しを測るための具体的な指標を整理しました。
そして、その指標を測るために必要な操作記録や稼働状況をきちんと取得できるよう、システムを設計し直したのです。私たち開発側にとっても、ここまでユーザーの体験に寄り添ってシステム設計を行うのは初めての試みで、非常に新鮮でした。
赤池:通信速度にしても、開発者はどうしても「通信が何秒で成功したか」といった技術的な視点で見てしまいます。でもお客さまにとっては、それが何秒で成功したかや技術的にどう進化したかは関係なく、使った際の体感として「遅い」と感じれば不満になる。お客さまが使ううえでどう感じるかという目線に立ち返り、指標を見直すきっかけになりました。
—そのワークショップでの気づきは、チームの姿勢や開発の進め方に、具体的にどのような変化をもたらしましたか?
岡田:考え方が根本的に変わりましたね。以前は、どうしても「エアコン本体に搭載される新機能に合わせて、アプリを対応させる」という、ハードウェア起点の開発がメインでした。いわば「言われたものを作る」という姿勢に近かったかもしれません。しかし、今では「どうすればお客さまにもっと喜んでもらえるか」を開発チーム自らが考え、データで分析し、サービスとして新しい価値を提案していく、という意識に一気に変わりました。
赤池:開発者個人としても、意識は大きく変わりました。以前は「リッチなリモコン」を作っている感覚でしたが、今は「遠隔操作だけではない、アプリならではの価値」を追求できるようになりました。たとえば、新しいOSの機能などを自分で試作してみて、「こんな体験ができますが、どうですか?」と提案したりもするようになりましたね。
ご愛用者の声
ハードウェアと連携するソフトウェア開発の難しさと面白さ
—エアコンというフィジカルな「モノ」を扱う開発ならではの難しさや面白さはどんな点にありますか?
岡田:私たちのアプリは、最新機種だけでなく、2017年以降に発売された過去のモデルもすべてサポートし続けなければなりません。新しい機能を開発する際は、過去のモデルすべてに影響が出ないかを検証する必要があり、これはウェブサービス単体の開発にはない難しさです。だからこそエアコン本体の仕組みを深く理解する必要があり、アプリだけの知識では作れない、一段とチャレンジングな開発経験が積める。それがこの仕事の面白さだと感じています。
赤池:ハードウェアは一度出荷すると修正が困難なため、開発スケジュールも制約が大きいです。ときには、拡張性を持たせるために本体側と連携しアプリ側で開発を進める、といった対応も必要になります。これは難しい点でもありますが、ソフトウェアの柔軟性を活かせる面白さでもありますね。
—どのような開発プロセスで進めていますか? また、工夫している点について教えてください。
赤池:私たちはスクラム開発という手法を導入しています。これは、開発や企画といった異なる役割のメンバーがひとつのチームとなり、密に連携しながら柔軟に開発を進めるためのフレームワークです。
常にスクラムを組みつつ、3つか4つの機能を同時並行で開発しているので、それをいかに管理していくかは常に課題です。そのために「Jira」というタスク管理ツールを活用していて、誰が何をしているのかを開発メンバー全員がわかるようにしています。
また、情報共有の場として、毎朝15分程度の短いミーティングで日々の進捗を共有し合っています。それに加えて、週に2〜3回は仕様などを検討・共有するための会議を設けていますね。
岡田:一番大切にしているのは、機能ごとにチームを細かく分けるのではなく、あくまで「ひとつのチーム」として活動することです。このスクラムを主体とした開発スタイルを始めて2〜3年になりますが、常に全員で目線を合わせ、アプリ全体としての整合性を保つことを意識しています。そうすることで、個別の機能開発に閉じることなく、エオリア アプリとしての統一された価値を提供できると考えています。
熱波が命を脅かす時代。命を守るインフラをゼロからつくれる魅力
—パナソニックでソフトウェア開発に携わることのやりがいをあらためて教えてください。
岡田:多くのお客さまに使っていただき、その反応がダイレクトに返ってくることです。開発して終わりではなく、使っていただくことでデータが溜まり、それをもとにより良い価値を提供する。この好循環を生み出せるのは、BtoCならではの大きなやりがいです。
赤池:レビューで厳しいご意見をいただくこともありますが、そのなかに「このアプリは本当にありがたい」という一言を見つけると、疲れが吹き飛びますね。
また、近年の猛暑で、エアコンは快適なくらしのための製品から、命を守るための「生活必需品」へと役割が変化しています。私が入社したころは、エアコンはまだ「くらしを快適にするため」の製品という側面が強かったと思います。しかし、今やエアコンは「ないと生命を維持できない」ものとなりました。快適さを超えて、人の命を守る社会インフラのような製品にソフトウェア開発で関われていることに、大きな責任とやりがいを感じています。
—エアコン、ひいては「空調」という領域に携わること自体の面白さや、やりがいについてはいかがですか?
岡田:空調が扱う「空気」は、目に見えない感覚的なものです。しかし、その環境を快適にすることで、人のパフォーマンスや能力を引き出すといった、さまざまな効果を生み出すことができます。たとえば、空調をコントロールすることで、その人がどれだけ質の良い睡眠をとれたか、といったことまでアプリで見える化できれば、まったく新しい価値を提供できるかもしれない。目に見えないものだからこそ、探求できる可能性が無限にあるのが、この仕事の面白さですね。
—最後に、エオリア アプリは今後、どのように進化していくのか教えてください。
岡田:ユーザー目線での開発という基本姿勢は変わりません。今後は、蓄積されたデータをもとに、よりパーソナライズされた情報提供や、新たな価値を生み出すための収益化も視野に入れています。BtoCだけでなく、BtoB向けの展開も模索し、アプリを核とした新しいサービスを提供していきたいと考えています。
赤池:現在提供している機能や価値に留まらず、アプリ独自の機能を通じてお客さまに新しい体験を提供し、それに対して価値を認めていただけるような展開を目指していきたいです。
エオリアアプリ
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●写真、イラストはすべてイメージです。
●エアコンが「お知らせ」表示機能搭載の場合、付属リモコンの表示内容と、アプリの画面表示内容は、一致しない場合があります。
●「エオリア アプリ」のダウンロード(Android™スマートフォンはGoogle Play™、 iPhoneはApp Storeからダウンロード可能)と、サービスのご利用にはログインIDが必要です。「エオリア アプリ」をダウンロードできない機種では、ご利用いただけません。ログインIDはパナソニックの会員サイト「CLUB Panasonic」よりご登録いただけます。
●「エオリア アプリ」は無料です。ダウンロードおよびサービスのご利用には通信費がかかります。
●通信環境や使用状況によっては、ご利用できない場合があります。
●常時インターネット接続が可能な環境が必要です。
●無線LANブロードバンドルーターが必要です。WEPのみ対応の機種はお使いいただけません。
●ルーターのLAN設定で固定IPをご使用の場合は、設定をDHCP(IPアドレス自動割り当て)に変更してください。
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