VIERAが選んだ放熱アプローチ
“サーマルフロー”の正体"風"の設計が画を変える
ビエラの有機ELモデルは映像の進化に合わせて、常に最高の画質を求めて開発を進めてきました。
パネルの持つ性能の限界を突き詰めた結果、有機ELパネルの画質性能に影響を与える「熱」に改めて注目し、パネル空冷技術「サーマルフロー」を新たに開発。
その道のりを開発チームのリーダーを務める今村庄作にインタビューしました。
美しい映像への追求から生まれたパネル空冷技術「サーマルフロー」の効果
有機ELパネルの高精細な映像を可能な限り美しく繊細に表現するため、パナソニックの技術陣が試行錯誤を重ねて開発したのが、Z95Bに採用されたパネル空冷技術「サーマルフロー」です。本技術を搭載したZ95Bは、従来モデルZ95Aと映像を比べても一目でわかるほどに進化しました。
Z95Aはバックカバー一体型放熱プレートと独自素材を用いた貼り付け構造によって効率的な放熱を実現しましたが、それでも多くの課題を残していました。
そこで、25年モデルZ95Bはバックカバー一体型放熱プレートと独自素材を用いた貼り付け構造※をそのままに、テレビ背面部の構造自体を大きく見直して設計された「サーマルフロー」を新たに開発し、有機ELパネルの発光性能を高めることに成功しました。
※65V/55V型のみ
従来モデルとの映像比較イメージ
*65Z95Aと65Z95Bで比較
追求したのは最高の映像美、放熱設計へのあくなき挑戦
-有機ELビエラの高画質について、今までの経緯とチャレンジを教えてください。
ビエラは2017年にグローバルで有機ELテレビを導入してから、プラズマテレビ同様に自発光による高画質を追求してきました。初期の頃は画質処理の見直しや3次元カラーマネージメント回路の活用、HDRといった規格に対応するなど、当時としても好評をいただいておりました。
しかし、4K映像は映画、ドラマ、アニメ、ゲームなどあらゆる映像コンテンツに普及し、非常に速いスピードで進化しました。これらのコンテンツをいかに美しく再現できるかという課題に対してビエラ開発チームは挑戦を続けており、それを解決するために有機ELテレビで重要なアプローチの一つが「放熱」でした。
-その「放熱」ですが、映像にどのような影響を与えるのでしょうか。
ちょっと極端な例かもしれませんが、例えばスマートフォンの場合、充電しながら、あるいは真夏の環境で使用すると熱によって警告が出たり、画面が暗くなったりしますよね。影響や程度は製品によって異なりますが、一般的に電化製品への熱の影響は無視できません。有機ELテレビは有機ELパネルそのものが発生する熱、また、様々な要因で発生するテレビ内部の熱が画質に影響を及ぼします。例えば、正確な色の再現や高輝度を安定的に維持することなどが難しくなる場合があります。結果的に、この熱への対策を行わなければ、どんなに優秀なパネルも性能を活かすことができません。そこで、放熱構造に着目したんです。
-「放熱構造」に対するアプローチの転機はいつだったのでしょうか?
2019年モデルのGZ2000からです。パネルの性能をできるだけ引き出すために、パナソニック独自の設計・組み立てによる「Dynamicハイコントラスト有機ELディスプレイ」を採用してディスプレイ構造を一新しました。2021年モデルのJZ2000からはバックカバー 一体型放熱プレートと独自素材を用いた貼り付け構造を採用し、より高い放熱効率を実現することに成功しました。これらの放熱構造の改良を2024年モデルのZ95Aまで続けましたが、同時にディスプレイ部の構造の開発だけでは放熱性能の限界も見えていました。
-放熱性能の限界を突破しないと更なる高画質化はできないという事ですね。
その通りです。有機ELテレビとしての発光輝度を上げるためには二つのアプローチがあり、有機ELパネルの発光効率をあげることと、より多くの電力をパネルに投入することがあります。Z95Aでは進化した有機ELパネルである「マイクロレンズ有機ELパネル」を採用し発光効率を向上させています。さらに、Z95Bに採用した「プライマリーRGBタンデム」は更なる発光効率の向上を目指して、発光層を従来の3層から4層に増やしています。Z95Bの放熱構造の開発では、当初は従来の独自ディスプレイ構造をベースに試作を重ねました。しかし、パネル自体の発光効率は進化していましたが、その性能をより引き出すために電力を投入していくと、サーモグラフィなどの確認ではテレビ内部の温度は影響を無視できないレベルに達していました。このままでは、パネルの温度上昇を抑えるために発光レベルを制限するしかなく、高輝度な映像を安定して表示させることができないため、「プライマリーRGBタンデム」が持つポテンシャルを十分に引き出せないという結論に至りました。
進化したパネルの性能をさらに引き出すための放熱設計
「プライマリーRGBタンデム」の特長の1つは明るさにあります。従来モデル(Z95A)で搭載していた有機ELパネルでは3層だった発光層が4層に増え、さらに青色の蛍光体を最新のものに変更することで、光の波長を最適化。これにより、発光効率の向上によるコントラスト向上と光の純度アップによる広色域化を達成しました。しかし、明るい映像ほど自発光である有機ELパネルは熱を発生させます。発熱の性質は、明るい映像がどんなものであるか、例えば瞬間的だったり、持続的なものだったり、映像コンテンツやシーンによって刻々と変化します。「サーマルフロー」による放熱は、パネルの輝度性能をさらに引き出し、より多くのシーンで明るく美しい映像を表示することに効果を発揮します。
-この状況を打開するために、どのような取り組みをされたのでしょうか。
実は2024年モデルまで、パネルとそれ以外の筐体部の開発はチームが分かれていました。先に述べた「Dynamicハイコントラスト有機ELディスプレイ」もパネルチームでの放熱設計に注力したものになっています。それ以外のチームは、電源や信号基板から出る熱の処理、スピーカーや背面カバーの放熱孔の配置などを担当していました。個々の放熱設計としては問題はなかったのですが、組み合わせた際の相互作用による影響を抑えきれていなかったことで必要とされる温度のレベルに至っていませんでした。
問題を解決するため、分業していたチームを統合的なチームへと変えました。その結果、Z95Bでは放熱のためにテレビ設計の常識を捨てて見直す必要があるということが見えてきました。
左から瀧倉 秀明、石田 悠斗、今村 庄作(開発リーダー)、古賀 謙一郎
-「常識を捨てて見直す」について、具体的に教えてください。
大きくは3つあります。
1.有機ELテレビは液晶テレビに比べて薄いというデザイン性へのこだわり、2.ウーハーの配置は画面中央、3.放熱孔は多いほど良い。
これらは私たちの頭の中に「フラグシップの有機ELテレビはこうあるべき」という固定観念のようなものになっていましたが、ここでチームを統合化してきた結果が出てきました。高音質を犠牲にしてまで、パネルの最薄部を設ける必要があるのか?今まで常識だと思い込んでいたものを逆に考えることで、解決策の糸筋が見えたのです。
最薄部優先のデザインの見直しを図り、フルフラットの新デザインを採用することで部品の配置や構造の自由度が生まれ、「画質・音質に意味のあるデザイン」を生み出すことができました。
-「サーマルフロー」の開発はスムーズに進みましたか?
試行錯誤の繰り返しでした。効率よく熱を逃がすというのは容易ではありません。放熱孔の増加、冷却ファンの搭載、水冷化など、思いつく限りの方法を試しました。しかし、運よく効果が得られたとしても、商品性の制約をクリアしなければなりません。例えば、高価な部品を使っていたずらに価格を上げることも望ましくありませんし、冷却ファンでは静音性が問題になる等の課題がありました。
また、従来からの手法として、私たちは熱の発生源に対して放熱孔を設けるという方法で解決を試みていました。この方法は部分的な熱を逃がすのには効果的です。しかし、サーモグラフィなどで見ると基板やウーハーの配置上の制約によって、有機ELパネルと背面カバーの間に熱が滞留してしまっていたのです。そこで、熱の発生源と熱の流れをテレビ全体として見直すことに着手しました。理論モデルによって仮説を構築したうえ、シミュレーションツールも駆使して検証を重ねました。
-そこで先ほどの常識を捨てての見直しが図られたのですね。
そうです。有機ELパネルの熱の流れは、背面カバーに覆われた、テレビセットの内部へ向かっていました。テレビは画質や音質・機能・デザインといった様々な性能を総合的にバランスを取ってパッケージングしていますが、有機ELテレビのフラグシップで優先的にお客様に提供すべき価値は高画質・高音質であるということを再定義し、画質・音質のために最薄部を無くすことにしました。これにより、背面カバーの設計思想をテレビ設計の常識にとらわれずに見直すことができ、その結果、画質・音質性能向上を実現する基板やウーハーの配置を実現することができました。また、多くの個所に設けていた放熱孔の設計を改め、暖かい空気は上に流れていくという性質を可能な限り活かすための放熱孔の配置にしています。
その際に注目して応用したのが、レーシングカーの開発などでも応用されている「エアロダイナミクス」、空気力学とも呼ばれる考え方です。テレビセットの内部において、煙突効果と呼ばれる物理現象を可能な限り最大化させることが鍵であるとの新しい設計コンセプトを導き出しました。
熱による温度変化によって変わる空気、熱の流れ方や、その流れの速さなど、様々な現象をシミュレーションツールで分析した上で、試作を何度も行いました。放熱孔も数を増やせばよい訳ではなく、位置も従来のままでは吸気と排気がテレビセットの外側で干渉して空気の流れを阻害します。これらのシミュレーションを繰り返し、テストを重ねることで従来の設計の限界を超えた放熱性能を持つ「サーマルフロー」が完成しました。
「サーマルフロー」による空気の流れ
レーシングカーの設計でも活用される空気の流れをコントロールする技術「エアロダイナミクス」を放熱設計に応用。テレビ本体の中を流れる空気を最適にコントロールすることにより、有機ELパネルの発光性能をさらに高めることに成功しました。空気の流れを見える化する流体シミュレーションにより、本体下部から上部へのスムーズな空気の流れを実現しています。
Z95Bがたどり着いた映像表現力の進化
-従来モデルと比べて、映像に明確な違いが出る場面について教えてください
プライマリーRGBタンデムと「サーマルフロー」を搭載したZ95Bは、有機ELパネルの利点を活かしつつ、さらに明るい映像を実現しました。一般的な認識として、昼間の明るい部屋で見るなら液晶テレビが見やすい、というイメージを持っている方が多いと思います。しかし、Z95Bなら映像の明暗を問わず、明るい部屋でもその高画質をお楽しみいただけると思います。
-結果として、Z95Bの映像はどのような表現力を得たのでしょうか?
Z95Bの映像は、有機ELパネルの持つ特長をより優れた形で実現できたと考えています。深く引き締まった黒はもちろん、暗部の階調も滑らかで潰れずに再現できます。さらに、高輝度部の階調も白飛びせずしっかりと表現できます。その違いについてはご視聴いただくと明確に分かりますので、ぜひ店頭などで見比べてください。
従来モデルと比較してZ95Bの映像はここが違う
-従来モデルと比べて、体感しやすい違いはなんでしょうか?
基本的には映画、ドラマ、アニメ、スポーツなど、様々なジャンルのコンテンツで違いがはっきりと分かるかと思います。映画であればSFの宇宙空間、ミステリーやホラーの緊張感ある場面の明暗の強弱、アニメも近年ではCGを多用した奥行きのある空間的なシーンなどは繊細な明暗表現で、より立体的に感じられると思います。また、最近では「シン・ゴジラ:オルソ」や「ゴジラ-1.0/C」のように、カラーからモノクロバージョンが制作される場合があります。モノクロは明暗で表現されるコンテンツですから、黒澤映画の様なモノクロ時代の映像も有機ELならではのきめ細かさで美しく再現されます。
緻密で安定したパネル発光制御による明暗の表現ができないと、映像制作者の意図がうまく伝わりません。テレビは明暗表現を元の情報から損なわずに再現できることが重要だと考えています。
様々なジャンルのコンテンツで効果を発揮する
映画
ドラマ
スポーツ
様々なシーンによる従来モデルとの映像比較イメージ
*65Z95Aと65Z95Bで比較
従来モデルとの放熱比較
放熱構造と放熱経路の違い
従来モデルは熱が中心付近に溜まりやすく放熱しにくい状態になっていました。この主な要因は、有機ELパネルの特性、基板やウーハーの配置上の制約と放熱経路が重なってしまったためです。Z95Bは、熱が集中して溜まりやすかったパネル中央部から基板やウーハーなどを遠ざける分散配置を行い、中央に空気の通り道を設けることで、流れがスムーズになるように見直しました。この内部構造を踏まえて、背面カバーの吸気口と排熱孔の数と位置を最適化することで、効率の良い放熱が可能になりました。
*65V型で比較
実際の空気の流れの違い
ウーハーを上部に移動させるなど、パネル中央付近に空間を作り出すことで、より大きな煙突効果を生み出し、熱源付近の空気の流れがスムーズになりました。結果的に熱を強制的に排除する放熱ファンの搭載も不要となり、静音性と放熱性の両立を実現しています。
*55V型で比較
パネル面(前面)温度測定の結果
サーモグラフィによる温度比較においても、「プライマリーRGBタンデム」と「サーマルフロー」の搭載により、Z95Bの温度上昇が抑えられていることが確認できます。
*65V型、映像モード「ダイナミック」で測定
有機ELテレビZ95B 技術者インタビュー
ラインアップ
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