“つもりみがき”にご用心!歯周病を予防・改善する歯みがきとは?

監修:遠藤 けい子(えんどう けいこ)
ライター:UP LIFE編集部
2023年10月27日
健康

全身の健康への影響が大きい歯周病。歯周病対策には、 “正しい歯みがき”がマストのようです。今回は深沢ガーデン歯科の遠藤けい子先生に、歯周病の予防・改善する歯みがきの方法についてお聞きしました!

虫歯よりもこわい!?歯周病の本当

写真:鏡で歯茎を見る女性

40歳以上の約8割の人々が歯周病だと話す遠藤先生。近年の研究で歯周病は歯を失う原因の第1位というだけでなく、全身の健康にも影響する厄介な病気であることがわかってきました。歯周病の原因は、歯周病を起こす菌の影響や、ストレスや生活習慣、体調の良し悪しなどの条件が複合的に交わって引き起こされるといいます。

「たしかに歯周病は原因菌が存在することが条件になりますが、その時々の身体の状態によっても引き起こされます。ストレスコントロールができていたり生活習慣が整っている場合は、口内に歯周病菌がいても自身の免疫力で健康を保つことができるのですが、ひとたびこのバランスが崩れると、歯周病菌の影響が強まり症状が出てくることも」と遠藤先生。

10代の頃から、歯周病を患っている場合も…

また、かつては中年以降の病気と考えられていた歯周病ですが、最近は低年齢化の傾向があるそうで、思春期の2割の方々が歯周病の一歩手前である歯肉炎になっているという統計も。その他、女性は妊娠中のホルモンバランスの変化で歯周病になる場合もあります。

「特に、1日の歯みがきの回数が2回未満の方や、喫煙をする方は要注意です。歯みがきの回数が少ない時点で汚れが落ちる可能性が低くなりますから。また、喫煙は血流を阻害するので、歯周病のリスクは当然高まります」。

歯周病を改善・予防する歯みがき!バス法とスクラビング法とは?

写真:歯磨きをする女性

とはいえ、厄介な歯周病を前に、為す術なし…というわけではありません。正しい歯みがきで、確実に食べかすを取り除くことで、歯周病の主要な原因である歯周病菌の繁殖が防げるといいます。

「1日3回以上の歯みがきをする方でも、みがいている“つもり”になっているかもしれません。正しい歯のみがき方をおさらいしましょう!」

「うがい&バス法、スクラビング法を合わせる歯みがきの方法」で歯周病を予防!

  1. うがいをして、口内に残っている大きな食べかすを落とす
  2. フロスや歯間ブラシを通す。フロス類は、歯と歯の間にすべらせ、さらに、歯間の歯周ポケットまで入れる
  3. 再度うがいをする
  4. 手鏡などで口元を見ながら、歯みがき粉をつけた歯ブラシを歯と歯茎のさかい目の斜め45度に当て、軽く小刻みにみがく(バス法)。フロスでアプローチできない歯周ポケットにも毛先を入れ、みがいていく
バス法、45℃

5.歯の表面は、毛先を垂直に当てて、横に小刻みにみがく(スクラビング法)

スクラビング法、90℃。

6.歯の裏は歯ブラシを縦に起こし、一歯ずつみがいていく

7.最後に軽くうがいをして終了

「上記の方法1〜7は、1日1回、できれば就寝前に取り入れてみてください。理由は、睡眠中は唾液の分泌が減り、細菌の量が増えるため。時間がない朝や昼は、食後のうがい、ブラッシングだけ行うなどでもOKです。うまくライフスタイルに取り入れ、習慣化していくのがよいでしょう」。

斜め45度に歯ブラシの毛先を当てるバス法は、特に歯周病の改善と予防に効果的です。ぜひ取り入れてみましょう。また、毛先が歯周ポケットに入って痛みを感じる場合は、ラウンド型でやわらかい毛先の歯ブラシを使うのがおすすめです。バス法とスクラビング法を掛け合わせる理由は、人の歯の形状や生え方は異なり1つのみがき方で完結できるものではないから。自分の歯やみがきやすさを考え、うまく組み合わせていくことが大切です。

みがき残しの癖を意識する

「特に歯の裏側はみがき忘れの多い場所。利き手側の上下の歯の裏側は、みがき残しが多くなりがちなので、意識するとよいでしょう。また、最後のうがいは軽めでOK。歯みがき粉に含まれるフッ素の成分を少し残すイメージです。水の量を少なくし、歯みがき粉の味が少し残るぐらいがよいでしょう」。

最後の軽いうがいは欧米では一般的なのですが、しっかり水で流したいという方も多いかもしれません。その場合はがまんせずゆすいで、うがい専用のマウスウォッシュで仕上げるなどするとよいでしょう。

正しい歯みがきと生活習慣で、お口から全身の健康へ!

写真:歯磨きをする女性

正しい歯みがきを身につけることは、虫歯はもちろん、歯周病予防にも大きなメリットがあります。ですが、強くこすったり、歯茎をみがくのはNGとのこと。

「歯みがきの際に、ゴシゴシと音がするみがき方はおすすめできません。歯茎はすごく薄いので、刺激を受けるとどんどん下がってしまいます。下がった歯茎により知覚過敏が起こったり見た目にもマイナスなので、余計な力は入れず、歯と歯肉のさかい目をみがく意識で行うのがよいでしょう」。

遠藤先生いわく、歯みがきと共に、食事、睡眠、運動のバランスを見直し、正しい生活習慣を意識することも忘れてはいけないそう。

「歯周病の改善や予防では、口内環境はもちろん、全身の健康を意識することが大切です。基本的な生活習慣のバランスに注意し、ストレスもあまり溜めすぎないようにしましょう。ご紹介した“正しい歯みがき”は習慣化が大切ですから、完璧に実行しようとは思わず何か1つでも取り入れてみる。そんなスタンスで行うのがよいかもしれません。歯みがきといったセルフケアだけでなく、プロ視点のケアである「歯科検診」も大切です。歯みがきの方法に疑問があったり、しっかりみがけているか知りたい方、そして歯周病の治療もクリニックではすべて対応できます。歯みがきこそ健康な口内を実現する第一歩なので、気負わずぜひ相談してくださいね!」

監修

写真:遠藤 けい子さん

遠藤 けい子(えんどう けいこ)

歯科医師。深沢ガーデン歯科院長。日本口腔インプラント学会、日本歯周病学会、アンチエイジング歯科学会所属。東北大学教育学部を卒業後、社会人経験を経て東京医科歯科大学歯学部歯学科に編入学。小学生の頃、プラークを顕微鏡で覗いた時の衝撃から歯科医師に憧れ、歯学部に学士入学した。卒業後は、同大学附属病院で研修を積んだのち、都内歯科クリニックに勤務。2021年、世田谷区にクリニックを開院。むし歯だけでなく、デンタルケアの相談など、歯のお悩み全般に対する専門知識とわかりやすい説明で定評を得ている。

2023年10月27日 健康

  • 記事の内容や商品の情報は掲載当時のものです。掲載時のものから情報が異なることがありますのであらかじめご了承ください。