【専門家監修】「殺菌」「除菌」「抗菌」の違いを知って、清潔な暮らしを守ろう!

殺菌、除菌、抗菌の違いや関連する言葉の知識についての監修:渋谷 智恵(感染管理認定看護師)
ライター:UP LIFE編集部
2021年3月22日
家事・くらし

感染症が気になって対策グッズを取り入れたり、購入を検討したりしている人も多いのではないでしょうか。そこでよく目にするのが「殺菌」「除菌」「抗菌」という言葉。みなさんはこの違いをご存知ですか。ぜひ違いを知って、清潔な暮らしづくりに役立てましょう。

似ている3つの言葉、表示できる製品が違う!?

いろいろな製品で目にする「殺菌」「除菌」「抗菌」という言葉ですが、「殺菌」は薬機法(正式名称は医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)という法律にもとづき、その効果が認められた医薬品・医薬部外品のみでしか表示できません。
一方、「除菌」と「抗菌」には、このような法律による規制はありません。そのため、家電や雑貨などでよく使われています。

このように3つの言葉は表示できる製品が違い、言葉の意味も少しずつ異なります。ここからは言葉の意味についてみていきましょう。

殺菌は「菌を殺すこと」!

手のひらに除菌スプレーを掛けている様子

殺菌の意味は「細菌などの微生物を殺すこと」です。ただし、対象とする微生物の種類や取り除く程度に決まりはありません。たとえ一種類の微生物しか数が減らせなくても、少ない数の微生物しか取り除けなくても、そして殺さなくても、とにかく微生物の数を減らすことができれば「殺菌」を表示することができます。
ただし、殺菌は先ほども紹介した通り、医薬品または医薬部外品でなければ表示できません。ちなみに、医薬品とは病気の診断・治療・予防に使われる薬、医師の処方または、薬剤師や登録販売者の助言がなければ購入できません。医薬部外品は不快感(吐き気など)、体臭、ただれなどの防止や、脱毛予防・育毛・除毛を目的とした有効成分を含んでいるものです。医薬品に比べて人への作用が穏やかで、ドラッグストアなどで購入することができます。

除菌は「菌を取り除くこと」!

除菌とは細菌などの微生物を取り除くこと。実は、殺菌と除菌は、殺菌のように表示できる製品に制限がある以外に違いはありません。そのため除菌は医薬品や医薬部外品ではない雑貨に使われることが多く、洗剤やアルコールスプレー、清拭用クロスなどでよくみられます。
除菌も殺菌と同様に、取り除く微生物の種類や程度について決まりはありません。そのため、業界団体が独自に除菌表示に関して統一基準を設けています。例えば、洗剤・石けん公正取引協議会では「洗剤の除菌表示」に関する施行規則の中で、除菌の定義や除菌と判断する基準などを定めています。

抗菌は「菌の増殖を抑えること」!

子供がぬいぐるみを抱えて眠っている様子

抗菌は細菌などの微生物の増殖を抑えることです。日本のあらゆる製品や技術の規格を定めている日本産業規格(JIS)では、「製品の表面における細菌の増殖を抑制する状態(カビや酵母などの真菌類は含まれない)」と定義していて、加工されていない製品の表面と比較して細菌の増殖割合が100分の1以下(抗菌活性値2以上)である場合、その製品に抗菌効果があると規定しています。「殺菌」や「除菌」のように微生物を殺したり、取り除く効果はありません。キッチン用品やトイレ用品、バスグッズ、衣類、ぬいぐるみ、おもちゃなどでよく使われています。

知っておきたい「滅菌」「消毒」「制菌」「静菌」

殺菌、除菌、抗菌以外にも、「滅菌」「消毒」「制菌」「静菌」という言葉を目にすることもあるでしょう。その意味を簡単に確認しておきましょう。

  • 滅菌
    全ての微生物を死滅・除去することです。日常生活で見聞きすることはほとんどありませんが、医療現場では手術に使用する医療器具などで用います。
  • 消毒
    有害な微生物を害のない程度まで減らしたり、感染力を失わせて無毒化したりすることです。殺菌と同様に、医薬品・医薬部外品のみ表示することができます。
  • 制菌
    主に布製品に使われる言葉で、繊維に付着した微生物の増殖を抑えることです。布製品の場合、抗菌加工の目的は防臭で、主ににおいの原因となる黄色ブドウ球菌の繁殖を抑えます。一方、制菌加工は繊維に付着したより幅広い菌の増殖を防ぎます。そのため、医療機関のユニホームなどに表示されています。
  • 静菌
    微生物は殺さず、増殖や発育を抑えることです。防腐剤を使用したり、冷蔵庫で保存したりして繁殖を防ぐときなどに表示します。

製品や求める効果の違いによって、表示される言葉も変わってきます。その意味を正しく理解して適切な対策グッズを使い分けることで、清潔な暮らしを守っていきましょう。

家電製品の効果として表示できるのは「除菌」と「抗菌」

「殺菌」は医薬品または医薬部外品でのみ効能・効果を表示できます。そのため、生活家電の効果として表示できるのは、「除菌」または「抗菌」です。「除菌」「抗菌」を表示する場合には、必ず効能・効果試験を行い、業界団体等が定めている基準をクリアした上で、試験方法や試験結果などを記載することが求められています。
家電製品の表示ルールは、全国家庭電気製品公正取引協議会が決めています。そこでは除菌と抗菌について、次のように定義しています。

〈除菌〉
ある物質又は限られた空間より微生物を除去すること。

〈抗菌〉
微生物の発生、生育、増殖を抑制することをいい、細菌のみを対象とする。なお、機器の抗菌加工における「抗菌」の定義はJIS Z 2801による。

「除菌」「抗菌」機能が搭載されている生活家電はこちら

殺菌、除菌、抗菌の違いや関連する言葉の知識についての監修

写真:渋谷 智恵

渋谷 智恵(感染管理認定看護師)

国際医療福祉大学大学院 保健医療学専攻看護学分野修士課程修了。
浦安市川市民病院に勤務する2003年に感染管理認定看護師の資格認定を受け、専従で感染管理を担当。2009年より公益社団法人日本看護協会 看護研修学校 認定看護師教育課程 感染管理学科専任教員となり、2016年より同課程の課長に就任。

2021年3月22日 家事・くらし

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