長く使い続けられる、確かな品質を使いやすさにこだわった収納設計
週末などにまとめ買いをする家庭が増える中、冷蔵庫には“収納性”がますます求められるようになっています。パナソニックの冷蔵庫開発機構設計チームが大切にしているのは、単に容量を増やすだけでなく、「使いやすさ」と「収納性」を両立させること。容量だけが増えても、目や手が届かない・出し入れに手間がかかる設計だと、結局デッドスペースが増えるだけだからです。出し入れがラクで、効率的に収納・整理ができるパナソニックの冷蔵庫の“収納性”は、時代とともに進化し続けています。
「使いやすい収納スペース」をどう増やす?構造から見直しを
容量が大きくなってたっぷり食品を入れることができると、次に考えるのが出し入れのしやすさです。設計チームは野菜室・冷凍室の引き出しの使い勝手に注目。従来の引き出しは途中までしか開かなかったため、引き出し奥の食品に気づかず、野菜などが“見たくない状態”になって発見されることも……。「そんなストレスをなくすためにも、引き出し奥をもっと活用できるようにしたいと全開タイプを開発したのです。それが『ワンダフルオープン』でした」と機構設計を担当している渡海は話します。100%※全開する『ワンダフルオープン』は、食品の使い忘れを減らし、フードロス削減にもつながります。
大きく引き出すと、引き出しレールには負担がかかる
ここで一つ、壁にぶつかりました。それは引き出しを支えるレールの耐久性。「最大限まで引き出すと、中の食品の重さでレールへの負担が大きくなります。たくさんものを入れても軽々と引き出せるスムーズさはもちろん、長年使ってもガタつきや歪みが生じない耐久性が不可欠です。そこで、6点で重量を分散して支える『高耐荷重ベアリング式レール』を採用。レール内に組み込まれた直径数ミリのほぼ真球※に近いボールがスムーズに転がることで、片手でもラクに開閉できる“軽さ”が長続きする構造を実現しました」
これにより、食品をたっぷり入れても軽々と引き出せ、引き出しが重くならないレールになったのです。
※真球とは、歪みのない完全な球体。
もっと容量を大きくできないか?冷蔵庫の“常識”を覆す「トップユニット方式」の誕生!
『ワンダルフルオープン』によって引き出しのデッドスペース問題は解決されましたが、設計チームはまだ満足していませんでした。というのも、当時の冷蔵庫の一番下、引き出しの後ろにはコンプレッサーが設置され、引き出し面積が制限されていたのです。「コンプレッサーを別の場所に移動させれば、引き出しを背面いっぱいまで広げられるのでは?」と検討を開始。お客様から寄せられていた“冷蔵室の最上段奥は手が届きにくい”という声をヒントに、使いづらい上段奥にコンプレッサーを移動することを思いついたのです。これにより冷蔵庫の奥行きいっぱいまで野菜室・冷凍室の引き出しを広げられるように!また、コンプレッサーを上段奥に配置したことで冷蔵室の最上段のデッドスペースが減り、目と手が届くようになりました。
「冷凍室と野菜室の奥行きを広くして使いやすく」というパナソニック独自の『トップユニット方式』のアイディアが生まれた瞬間でした。
毎日使うものだから、安心・安全を第一に考えたものづくりを
しかし、コンプレッサーの上部への移動は、簡単なことではありません。なぜならコンプレッサーは約10kg※の重量があり、冷蔵庫の重心が上がることで転倒のリスクが高まるからです。設計チームは「日常お使いになる際に、お客様がケガをしないように」という強い思いのもと、子どもがよじのぼるなどさまざまなケースを想定し転倒しにくい設計を検討。構造・材質の検討を重ねCGで再現・検証するなど、重心のコントロールを徹底し、約1年かけてようやく『トップユニット方式』を実現することができたのです。
※2004年の開発当時。現在は約7kg。
渡海が持っているのがコンプレッサー。コンパクトながら現在は約7kgの重さがあるため、『トップユニット方式』にした際の冷蔵庫の転倒リスクを徹底的に検証する必要があったと話します。
理論上だけでなく、冷蔵庫を使った傾斜試験にもこだわっています。「新商品はもちろん、既存商品についても部品の変更などがあるたびに試験を実施。あらゆる方向に約10°傾けて転倒しないことを確かめているからこそ、自信を持って『トップユニット方式』をお客様にお届けできます」
365日24時間使われるものだから。強さへのこだわりがやさしさを生む
傾斜試験以外にも、安全性と使いやすさを長年キープできるかどうかを確かめるための検証も実物で行っています。中でも、扉や引き出しは1日に何度も開閉される箇所。長年使っているうちに「ドアが重くなった」「ガタつき・開閉しづらさが出てきた」などの違和感が生じないかどうか、冷却性能がキープできるかどうかを検証。引き出しに約30kg分の重りを入れ、約20年相当の開閉を数週間かけて行います。「室温によってレールのひずみ具合も変化するため、開閉試験は5℃〜30℃の温度下で行います。実際にお客様の住まいで使われることを想定して検証しています。耐久性という“強さ”は、毎日使う人にとっての“やさしさ”につながる大切な要素だと考えています」
フレンチドアの「3:7」のバランスには、実は使いやすい3つの理由があった!
両扉を左右に開いて使うフレンチドアタイプの冷蔵庫。パナソニックでは左右の扉のバランスが「3:7」になっています。なぜ「5:5」ではないのでしょうか?それは「冷気の流出を最小限に抑える」「庫内を奥まで見渡しやすい」「大きな鍋も入れやすい」の3拍子が揃っているから!とくに片方を開けたときの庫内の見渡しやすさは何度も検証を重ねたこだわりポイント。さまざまな形状の扉の中で、もっとも多くの人が「一番奥まで自然と目が届く」と回答したのが「3:7」だったのです。
両開き扉の左右差は、ともすると開閉時の違和感にもつながりかねません。そのため、同じ力加減で開閉できるようハンドルの形状、ラッチの強さをきめ細かく調整し、誰でもスムーズに使えるように配慮しています。