開発者インタビュー|第3回「絵作り・表現機能」

第1回:システム

システム

第2回:S series Lens

S series Lens

第3回:絵作り・表現機能

第3回 絵作り・表現機能

第4回:操作性・信頼性

第4回 操作性・信頼性

映像表現の覚醒。

被写体の「らしさ」を感じる、人間の感性に迫りたい。

-“絵作りの思想”とはどういったものでしょうか?

周防:画質には数値的価値と、感性的価値の2面があると考えています。私たちは後者を“絵作り”と呼んでいますが、思想を持つことですべてのLUMIXの絵作りに一貫性を持たせることができるようになります。例えばマイクロフォーサーズのG9 PROとフルサイズのS1Rを併用した場合でも、撮った写真に自然と統一感が生まれプロの信頼獲得につながっていくと考えています。

 

-ではLUMIXの絵作りの思想とは何でしょうか?

周防:一言でいうと「生命力・生命美」 です。「それぞれの写真の背景にある命の営みや、時の流れまでも感じられるような絵作りを目指す」というものです。そのためには、それぞれの被写体が持つ“被写体らしさ”をしっかりと表現することが重要になります。例えば青空が広がる風景の場合、その青空の奥行き感まで表現できていること。また、生き生きと咲く花であればみずみずしさが表現できていることです。

周防 利克(絵作り企画担当)

周防 利克(絵作り企画担当)

-その「生命力・生命美」の絵作りがフルサイズでどう進化するか、非常に興味があります。

周防:プロ写真家へのヒアリングなどから得られたキーワードは、靄がかった山々から感じられる「湿度感」の表現でした。これが実現できると「奥行き感」や「立体感」といったさまざまな被写体の表現力を高めることにもつながっていくというのです。

 

-「湿度感」…聞き慣れない表現ですね。

周防:確かに、極めて感覚的で曖昧です。これを表現するためには、その正体を私たちなりに理解するところから取り組む必要がありました。実際に霧がかった山々などを撮影し、議論しては画質設計にブレイクダウンさせる。それを何度も何度も繰り返すことによって「湿度感」の正体を解き明かし、マイクロフォーサーズで作り上げてきた絵作りにそのエッセンスをプラスすることができました。

 

-そのような開発努力があったとは知りませんでした。

周防:私たちが目指す絵作りは、単にフルサイズセンサーを使えば実現するという単純なものではないということです。逆にいうと、絵作りの思想をしっかりと踏まえた上で「湿度感」や「奥行き感」が表現できるようにセンサーやエンジンを使いこなすことが重要なのです。

空気や湿度。Sシリーズは、見えないものも描き出す。

-「湿度感」の表現。画質設計的には苦労も多かったことと思います。

岡本:形のあるものならともかく、見えないもの、感覚的なものを表現しようとする取り組みでしたので、着手時点では「こうすればよい」という方向性が分かりませんでした。それを模索し、分析しながら画質設計に落とし込むのは、決して簡単なことではなかったですね。

 

-ブレークスルーとなったのは。

岡本:特に「湿度感」の表現においては、繰り返し分析を進めていく中で、ディテールとグラデーションの処理が重要だということが分かってきました。解像力やコントラストのごくわずかな変化…淡いトーンやシャドウのディテールを繊細に描写することにより、靄の中に山の木々が消えていく様子などが表現できるのです。私たちは、それが「湿度感」の正体であると考えました。

岡本 晃宏(画質設計担当)

岡本 晃宏(画質設計担当)

-その知見をエンジンに落とし込んであるわけですね。

岡本:LUMIXには、インテリジェントディティールや3次元色コントロールといったこれまでマイクロフォーサーズで培ってきた高い画像処理技術があります。Sシリーズでは、描写性能の高いレンズ、高解像・高感度・高ダイナミックレンジなセンサー、高性能な画像処理エンジンを組み合わせることで、「湿度感」を表現することができるようになりました。また一歩、「生命力・生命美」が示す理想へと近づけたと思います。

これまでにない、新たな表現機能を体感してほしい。

-ハイレゾモードやHLGフォトなど、斬新な撮影機能を搭載すると聞いています。

大須賀:ハイレゾモードはイメージセンサーをサブピクセルピッチで動かしながら8枚を連写し、高解像な画像を生成する技術です。S1Rの場合、最大約1億8700万画素という圧倒的な超高精細RAW画像が得られます。

 

-同様の技術はG9 PROでも実装していますね。

大須賀:そうですね。しかし、今回Sシリーズでは風景撮影などにも使える新たなモードを追加しています。従来、葉っぱの揺れなど、撮影中に動いた領域は像がブレていましたが、動きを検出した領域のブレを抑えて自然な表現ができるようになりました。

大須賀 恭輔(ソフト設計担当)

大須賀 恭輔(ソフト設計担当)

-HLGフォトとは耳慣れない機能です。

大須賀:HLGフォトはハイブリッドログガンマ規格に基づいてHDRの画像を生成する機能です。HLGフォトでは、HLG対応ディスプレイにおいて最適となる階調特性を新開発しました。HLG対応ディスプレイで見ることで、従来よりもハイライト/シャドウ部のディテール表現力が高まり、“まぶしさ”や“きらめき”までも表現できます。また、色域もこれまでより広がっており、木々の緑なども色彩豊かに表現できます。

 

-デモを見たとき、こんなにもまぶしさが表現できるのかと驚きました。

大須賀:通常のJPEG記録は8bitに対して、HLGフォトは10bitと分解能が高く、さらに、特に高輝度側の記録できる範囲が広がり、ダイナミックレンジが人間の目に見える範囲に近づきました。これはもう、別世界の表現機能だと思っていただいた方がいいでしょう。「ライトボックスを使って、ポジフィルムを透過光で見た時の印象」を目指して開発を行いました。プリントとは異なる新たな写真表現を、ぜひ味わってほしいと思います。

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第3回:絵作り・表現機能

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