歯周病の適切なケア
歯周病は年齢や性別に関係なく、誰でもかかる可能性がある病気です。歯周病を予防するためには、毎日の正しい歯磨きやプロによる定期的なケアが有効です。
歯周ケアはいつから始めたらいいか
多くの人が10代後半ごろには歯周病菌に感染し、口腔内の歯周病細菌の基礎は20~30歳ごろにかけて定着するといわれています。それでも20代くらいまでは菌に対する免疫力が高く、健康的な歯ぐき(歯肉)の場合は、自浄性があり、歯の汚れが取れやすい状態です。
ただし30代以降になると加齢によって全身の免疫力が徐々に低下し、若い頃と同じように過ごしていても、歯ぐきの炎症などの症状を発症するようになります。そのため、30代後半ごろからは特に歯周ケアを意識する必要があるでしょう。
若いからといって、歯周病にならないわけではありません。口腔内を清潔に保つことを意識しましょう。
「感染」と「発症」の違い
細菌やウイルスなどの病原体が体内に侵入することを「感染」といいます。感染後、何らかの病気の症状が現れることを「発症」といいます。「感染」と「発症」は全く別のステージを指すもので、感染したからといって必ずしも発症するとは限りません。
毎日の歯磨きで歯周病対策を
日本では、ほとんどの人が1日に2回以上歯磨きをしています。
それにも関わらず、40歳以降になると多くの人が歯周病にかかってしまうのは、歯磨きをしていても磨き残しがある「つもり磨き」が原因です。
歯ブラシでは磨きにくい部分
実は、歯ブラシできれいにできるのは、歯の表(外側)と裏(内側)の部分だけなのです。歯周病予防において一番重要な、歯と歯ぐきの境目や歯と歯の間、奥の歯の奥の面は磨けません。 歯ブラシ1本で磨き残しなくケアすることは、非常に困難なのです。
歯ブラシ+αのケアの例
水流洗浄
タフトブラシ
歯間ブラシ
デンタルフロス
代表的な磨き方
歯の磨き方にはさまざまな方法がありますが、代表的なものとして「バス法」「スクラビング法」「フォーンズ法」「ローリング法」の4つがあげられます。
中でも、歯と歯ぐき(歯肉)の間の歯周ポケットのプラーク※1を落とすことが目的の「バス法」は、歯周病予防にも効果的です。
※1 プラークとは歯垢のこと。
バス法の磨き方
歯と歯ぐきの境目に45°の角度で歯ブラシを当て、左右に小刻みにブラッシングします。
スクラビング法の磨き方
歯に対してブラシを直角に当て、軽い力で小刻みにブラッシングします。
ローリング法の磨き方
フォーンズ法の磨き方
プロによる定期的な歯科検診を
お口の健康を維持するためには、プロフェッショナルケアが非常に有効です。歯科医院では口腔状態の確認や歯石の除去など、自分ではできない専門的なクリーニングを受けることができます。また、歯や歯ぐき(歯肉)の状態は年齢とともに変化し、適切な歯の磨き方も変わってきます。お口の状況に見合った口腔ケアのアドバイスをもらうことが、日々のセルフケアの質を高めることにも繋がります。
歯周病になってしまったら
歯ぐき(歯肉)が腫れている、歯磨き時に歯ぐきから出血が続くなどの症状がある場合、なるべく早く歯科医院で専門家に診てもらうことが重要です。
歯周病は歯科医師や歯科衛生士と患者が協力しながら治療することで、治すことができる病気です。
むし歯(う蝕)は数回の通院で治療が完了するのに対し、歯周病の治療には時間がかかります。歯周病は、炎症が慢性化し、歯を支える骨が溶けていく病気です。長期間かけて破壊された組織の治療には、それだけ時間がかかります。その間、患者は食習慣や生活習慣の見直しなど、歯科医師や歯科衛生士のアドバイスに従ってセルフケアを継続しなければなりません。
お話を伺ったのは
北海道大学
宮治 裕史 先生
歯学研究院 口腔総合治療学教室 教授
北海道大学病院 臨床研修センター 歯科卒後臨床研修部門長
*弊社から宮治先生に依頼し、頂いたコメントを編集して掲載しています。