歯周病とは
原因や症状、セルフチェック法

写真:歯列模型を手で持っている様子 写真:歯列模型を手で持っている様子

歯を失う原因の第1位である「歯周病」。症状が悪化すると完治が難しくなるばかりでなく、全身の健康にまで影響を及ぼします。歯周病とは、そもそもどんな病気なのでしょうか。詳しい特徴や、むし歯との違いについて教えていただきました。

歯周病とは

歯肉炎、歯周炎、歯槽膿漏の違い

歯周病とは、むし歯(う蝕)と並ぶ口腔の二大感染症のひとつです。歯と歯ぐき(歯肉)の隙間(歯周ポケット)にいる細菌が、歯肉に炎症を引き起こす「歯肉炎」。歯を支える骨が溶けて歯がグラグラになる「歯周炎」。これら2つを合わせて、歯周病といいます。
歯周炎の中でも歯肉の奥まで炎症が進み、歯ぐきが腫れて膿が出たり歯が大きく動揺する状態は「歯槽膿漏」とも呼ばれます。歯周病が進行すると最終的には歯を抜かなければならなくなってしまいます。

写真:歯列模型を手で持っている様子

歯周病は「世界で最も蔓延している感染症」としてギネスブックにも認定されています。日本の調査でも、歯を失う原因の約66%が歯周病とむし歯(う蝕)であり、第1位は歯周病(37.1%)、第2位はう蝕(29.2%)、第3位は歯の破折(17.8%)となっています※1

※1 参照:8020推進財団「第2回 永久歯の抜歯原因調査」(2018年)

①正常な状態 歯周組織 歯肉溝 歯肉 歯槽骨の位置 ②歯肉炎 歯垢・歯石 歯周病菌の位置 ③歯周炎(軽度) 歯周ポケットの位置 ④歯周炎(中度) ⑤歯周炎(重度) それぞれのイラスト ①正常な状態 歯周組織 歯肉溝 歯肉 歯槽骨の位置 ②歯肉炎 歯垢・歯石 歯周病菌の位置 ③歯周炎(軽度) 歯周ポケットの位置 ④歯周炎(中度) ⑤歯周炎(重度) それぞれのイラスト

むし歯(う蝕)との違い

むし歯は、歯そのものが壊されていく病気であるのに対し、歯周病は、歯を支えている組織が壊されていく病気です。破壊される組織が異なるため、全く別のものとして考える必要があります。 ​

むし歯の原因は、歯ぐき(歯肉)よりも上についた「歯肉縁上プラーク※2」、歯周病の原因は、歯と歯肉の隙間にいる「歯肉縁下プラーク※2」です。2つのプラーク※2の大きな違いは、付着している場所です。

※2 プラークとは歯垢のこと。

歯冠部 象牙質 歯肉縁上プラーク※2、歯根部 歯肉 歯槽骨 歯根膜 歯肉縁下プラーク※2 のイラスト

むし歯の主な原因はミュータンス菌と呼ばれる細菌です。ミュータンス菌が、食べ物に含まれる糖を栄養源として酸を出し、歯そのものを溶かして(脱灰)いくことによってむし歯が起こります。むし歯の進行が、象牙質や歯髄(俗にいう神経)にまでおよぶと痛みを伴います。

一方、歯周病には原因菌が複数存在します。代表的なジンジバリス菌は、歯と歯ぐき(歯肉)の境目から出る血清たんぱく質を栄養源にしています。 この血清たんぱく質は、歯肉を壊して炎症を起こさせることで、より多く出てきます。歯周病菌が歯の周りの組織を破壊し、歯周病が進行するのはこのためです。

歯周病のレッドコンプレックスとは

歯周病原菌の中でも、最も病原性が強いとされる3つの菌「ジンジバリス菌( Porphyromonas gingivalis )」「タンネレラ菌(Tannerella forsythia) 」「デンティコーラ菌(Treponema denticola) 」の総称。これらの菌は、歯周組織を破壊するだけでなく、炎症部から血管に侵入。血液にのって全身をめぐり、全身に健康被害を与えます。

ひっそりと進行する歯周病

歯周病はサイレントディジーズ(Silent Disease:静かなる病気)とも表現され、目立った痛みなどの症状を伴わず進行し、ひどくなるまで病気と自覚されることの少ない病気です。

歯周病の進行には、「歯肉炎」と「歯周炎」という2つの段階があります。
「歯肉炎」は、プラーク※2によって、歯ぐき(歯肉)が腫れた状態を指します。
「歯周炎」は、歯肉の付着部位から破壊され、歯根膜、歯槽骨を侵していきます。 歯を支えている土台である「歯槽骨」が侵され続けると、歯はグラグラと動揺しはじめ、やがて、抜け落ちてしまいます。

※2 プラークとは歯垢のこと。

①正常な状態 エナメル質 象牙質 歯髄 歯根膜 歯肉(粘膜) 歯槽骨 セメント質 ②歯肉炎 歯肉(粘膜) 歯垢 歯石 歯槽骨 ③歯周炎 歯肉(粘膜) 歯垢 歯石 歯周ポケット のイラスト ①正常な状態 エナメル質 象牙質 歯髄 歯根膜 歯肉(粘膜) 歯槽骨 セメント質 ②歯肉炎 歯肉(粘膜) 歯垢 歯石 歯槽骨 ③歯周炎 歯肉(粘膜) 歯垢 歯石 歯周ポケット のイラスト

「歯肉炎」の段階であれば、正しいケアにより、歯ぐき(歯肉)を健康な状態に戻すことができます。ところが、それを放置し、歯と歯肉が付着している部分が破壊される「歯周炎」になると、元の健康な状態に戻すことが困難になります。

歯周病の感染ルート

歯周病は感染症の一種です。歯周病菌を含んだ唾液を媒介して、他者に感染します。代表的な例としてあげられるのが、「親から子への感染」と「パートナー間の感染」です。ただし、歯周病菌が感染しても、必ず発症するわけではありません。人それぞれの免疫力や生活習慣が大きく影響してきます。

パートナー間での会話、親から子の会話 のイラスト

歯周病の半分程度は、夫婦間の感染であるという研究もあり、欧米では広く知られているところです。

こんな人は要注意。歯周病のセルフチェック

歯周病になるには、さまざまな要因があります。
ここでは、歯周病のチェックリストと「こんな生活をしていると歯周病になりやすいですよ」という5つの例をご紹介します。一つひとつが直接的な原因というわけではなく、いくつかの要因が重なった時に、歯周病のリスクは高まります。該当する項目が多い人ほど、注意が必要です。

CHECK

  • 歯を磨くと血が出る。
  • 朝起きた時、口の中がネバネバする。
  • 歯ぐき(歯肉)の下がりが気になる。
  • 歯間に食べカスが詰まりやすい。
  • かたいものが噛みにくかったり、噛むと痛いことがある。
  • 歯肉がときどき赤く腫れる。
  • 歯と歯の間にすき間ができてきた。
  • 歯がグラグラする。
  • 歯が浮いたような感じがする。

0個
歯周病の心配はありません。でも、日々のケアを怠らないで。
セルフケアに加え、定期的な検診が早期発見・予防に繋がります。

1個~3個
歯周病になっているかも。
症状が続く場合は、歯科医院を受診して精査してもらいましょう。

4個以上
歯周病の可能性が高いです。 早めの受診を強くおすすめします。

歯周病のリスクを高める生活習慣の一例​

  • 歯を磨かない日がある。
  • 喫煙の習慣がある。
  • 飲酒量が多い。
  • 常に睡眠不足である。
  • ストレス、疲労をためやすい。

お話を伺ったのは
北海道大学
宮治 裕史 先生

歯学研究院 口腔総合治療学教室 教授
北海道大学病院 臨床研修センター 歯科卒後臨床研修部門長

*弊社から宮治先生に依頼し、頂いたコメントを編集して掲載しています。

写真:宮治 裕史 先生

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