Digital FUN!「沈黙の艦隊 北極海大海戦」×Mini LED 4K液晶フラグシップモデル W97C
映画監督・吉野耕平さんが、Prime Videoで配信されている自身の監督作「沈黙の艦隊 北極海大海戦」を新発売のMini LED 4Kビエラ「W97C」で鑑賞。
迫力ある映像・音響を体感した感想や、画作りのこだわりを語ってもらいました。
[取材・文 /大畑渡瑠 撮影 / 間庭裕基]
──「沈黙の艦隊」はドラマシリーズも展開されたということで、テレビでの視聴も考慮されたかと思います。改めてデバイスの進化をどう捉えていますか?
密室で音に包まれる感覚や暗闇のシーンがある“潜水艦もの”は、映画館と相性がいいと昔から言われています。なので、どうしてもテレビで観るとパワーダウンしてしまうのは仕方がない。その中でも、もともとの“味”の7割は楽しめるものを作ろうというのが作り手の狙いではあるんです。ただテレビの進化によって劣化しない映像を受け取ることができるので、クリエイターとしても言い訳ができない境地にまで来たのだなと(笑)。細かい部分もあきらめずに突っ込んで制作に取り組めるなと思います。
──今回は、「W97C」で「沈黙の艦隊 北極海大海戦」を鑑賞しながらお話を伺えればと思います。まずはアレキサンダー戦に勝利した“やまと”が氷上に浮かび上がるシーンをご覧いただきましょう。ここでは空に浮かぶオーロラがきれいに映し出されます。
非常に悩んだ場面だったのですが……よくぞここまで映してくれたなという思いです。
──悩んだ、というと?
上空にオーロラがあり、その光のみで人物の表情を見せていかなければならない。原作マンガやアニメだと非常にシンプルなシーンなのですが、実写になった途端にバランスを取るのが難しくなるんです。オーロラはもともと撮影してきた実写映像をもとにCGで作り上げているため自由度は高いのですが、月もない中で人物や雪をどう見せていくのかを考えるのが大変。人の肌色も本来は暗闇の中ではこんなに色が出ないのですが、ドラマ的な盛り上がりを作るとなると真っ黒というわけにもいかず。「布団に入ったときに手が何色に見えているのか」みたいな……そういった感覚から画作りを始めなければいけなかったんです。
──なるほど。
また風に吹かれてる感じを演出するために細かい雪を降らせたのですが、オーロラをまたぐと一瞬黒く見え、人物に乗るとまた白く見えるというあんばいに気を配りました。画面を止めると見えないけれど、実は1コマだけ映ってるような細かい粒子も描写したり。現実とリアリティのはざまにあるようなシーンになりましたね。このテレビだと輝度も上がっているので、わりと見えやすくなっていると思います。ただここまで見えるのであれば、作り手的に「もう少しやっておけばよかった」という思いもあって。例えば制作時にはオーロラ+人間の寄りの表情という構図をメインにしようと舵を切ったのですが、ここまでくっきり見えるのなら奥に見える雪景色をしっかり作り込んで、引きのカットを見せるのもよかったなと……。そのほうが画としては美しくなるんですよ。
──制作を考慮し直すような、そんなテレビにまでなっているんですね(笑)。
本当にそうですよ。映画のように、ある程度全員が共通の画面で観ることが保障されていると、おのずと人物の顔のサイズは決まってくる。でもテレビはいろいろなタイプがありますからね。「寄りでサイズを大きくしておかないと表情まで見えないのではないか」と、変な固定観念を持って作ってしまうこともあります。
──またノルウェー・スヴァールバル諸島の場面では前半にピンク掛かった雪景色も映りますね。
暗いけど華やかという世界にしたかったんですが、このテレビでは非常にきれいに映していただいて安心しました。人間が肉眼で見たときの「ここを集中して見たい」という意識を利用しながら、「引き立たせる部分 / そうでない部分」を探っていった場面ですね。CGで作っていくと、どうしても1枚の静止画としての完成度を目指したくなるんですが、あえて肉眼で見たときの見えづらさ、光のまぶしさをリアルに表現しながら「どこに観客の意識を集中させるか」を考えることが多かったです。「フルCGのゲームであればすごく素敵に見える画作りだけど、実写と共存するときにはちょっと……」と思うこともあり、制作陣も思考が行ったり来たりすることがありました。
──続いてクライマックスの直前、暗い廊下を大統領が歩いていくシーンです。
ガラスに写っている表情の立体感がかなりよく出ていますね。従来のテレビですと黒く潰れてしまいますが、このテレビだと意図した感じに映っている。このシーン、制作ではバランスを図るのが難しくて……顔を見せすぎるとガラスに映った感があまり出ないし、かといってあまり見せないとシーンの意図が伝わらない。このテレビの強みがよく表れる場面だと思います。
──奥に見える暗い廊下にもその効果が?
“無限廊下”のように見えるべくシーンを作っており、奥のほうは意図的にグレーディングで色を落としているんですが、従来のテレビで見たら「落としすぎたね、戻したほうがよかったな」と思ってしまいますね。いいバランスで再現していただいているのがありがたいです。逆に制作側も手が抜けないなと(笑)。もし「自信はないけど……」という思いでシーンを作ったら、それがそのまま白日のもとに出てしまう。こちらとしては悩みにもなります(笑)。
──細かい部分まで攻めた画作りをされていたのですね。
そうですね。こういったテレビで意図した画をちゃんと再現してくれているからこそ、俳優の芝居にしっかりと目がいくんです。
──ではその流れでクライマックスも観てみましょう。潜水艦が浮上する際の振動や、大きな波しぶきが特徴的な大迫力のアクションシーンです。
……自分の作品ですが、見応えがありますよね(笑)。意図した“映像の圧”みたいなものをそのまま受け取ることができる。制作時はそういった“圧で突っ走るようなシーンを作りたいと思っていたんです。むしろ、そこさえ担保できればこの作品は大丈夫だろうと。劇場だとスクリーンの巨大さから自然と圧を感じていただけるのですが、テレビだとそうはいかないですよね。ここまで映し出してくれて本当にありがたいです。また波しぶきの場面では、マリンスノー※の粒子が本当に細かく見えるのがすごい。「テレビでは見えなくてもしょうがないか」と思っていたちりのような部分が、こうもくっきり見えるとは思いませんでした。
※海中を漂うプランクトンの死骸や排泄物。白い雪のように見えることから名付けられた
──また音の迫力はいかがでしょうか?「W97C」ではイネーブルドスピーカーを加えたシステムによって声の位置を最適化しており、映像と一体感のある音を体感できます。
かなりクリアになったように感じますね。どうしても効果音やセリフがあるところに音楽が乗っかると、全体的にモコモコしたような感覚を与えてしまうんです。せっかくの映像なのに、足を引っ張ってしまうのは非常にもったいない。このテレビで観るとかなり印象が変わります。
──今回は「沈黙の艦隊 北極海大海戦」をご覧いただきましたが、逆に本作以外で観てみたいシーンは思い浮かぶでしょうか。
細かい音までを拾えるというのも強みだと感じますので、将棋やチェスの静かな心理戦などもいいですよね。駒の音が小さく響き渡るような……。
──意外にも静かなシーンなんですね。
時計の針の音が“チクタク”となる描写で時間を表現するなど、静かなシーンこそドラマに引き込む要素を多く作ることができます。でもテレビですと環境的に日常の雑踏などがたくさん入りこんでしまう以上、視聴のうえで阻害されてしまう要素が多いこともクリエイターとしての悩みなんです。結果的に細かい描写ができず、「なんでもセリフで説明してしまうじゃないか」と批判を浴びてしまうことも。生活の雑音の中でもちゃんと耳に必要な情報が飛び込んでくるようなテレビを設計していただけることで、セリフに頼らなくても緊張感を伝えられるかなと思います。ディテールの幅が広がることで、作り手としての可能性を広げていただいているように感じますね。
──「沈黙の艦隊」でも海中での水の音など、細かい描写で抑揚を付けるようなシーンが数多くありました。今後はクリエイターによって作り込まれたシーンの細かい妙や、その意図を多くの視聴者が受け取れるようになるかもしれませんね。
今はコンテンツがどんどん充実して過去の名作なども観られるようになっているので、観る側のリテラシーも非常に上がっているように感じます。だから作り手側も「どうせ見えないから」「聞こえないから」というスタンスで臨むと、逆に視聴者に置いていかれてしまうのではないかと。こういったテレビがあることで、観る側も作り手も高みを目指して行けるのではないかなと思います。
吉野耕平(ヨシノコウヘイ)
1979年9月11日生まれ、大阪府出身。1999年に「夜の話」で第22回PFF審査員特別賞を獲得し、2011年に手がけた「日曜大工のすすめ」が第16回釜山国際映画祭ショートフィルムスペシャルメンションを受賞。CMプランナー・映像ディレクターを経て、CGクリエイターとして2016年の新海誠監督作「君の名は。」に参加した。2012年と2019年には次の時代を担う映像クリエイター選出プロジェクト“映像作家100人”にも選出され、2020年に「水曜日が消えた」で劇場長編監督デビュー。2022年の「ハケンアニメ!」では第46回日本アカデミー賞優秀監督賞に輝く。2023年にPrime Original映画「沈黙の艦隊」が劇場公開され、2025年にはシリーズ2作目「沈黙の艦隊 北極海大海戦」が封切られた。2026年5月に監督最新作「君のクイズ」が公開。「沈黙の艦隊」第3弾の製作も決定している。
映画「沈黙の艦隊 北極海大海戦」
Prime Video 見放題配信中
<ストーリー>
原子力潜水艦“やまと”は米第7艦隊を東京湾海戦で圧倒し、ニューヨークへ針路をとっていた。そしてアメリカとロシアの国境線であるベーリング海峡に差し掛かったとき、背後には一隻の潜水艦が。「核テロリスト・やまとを撃沈せよ」。それは米ベネット大統領が送り込んだ、やまとの性能をはるかに上回るアメリカの最新鋭原潜。海江田はオーロラの下、流氷が浮かぶ北極海での戦いに挑む。時を同じくして、日本では衆議院解散総選挙が行われることに。やまと支持を表明する首相・竹上登志雄は、残るも沈むもやまとと運命をともにする意思を固めるのだった。
<スタッフ / キャスト>
原作:かわぐちかいじ「沈黙の艦隊」(講談社「モーニング」)
監督:吉野耕平
脚本:高井光
プロデューサー:戸石紀子、松橋真三、大沢たかお、千田幸子、浦部宣滋
出演:大沢たかお / 上戸彩、津田健次郎 / 中村蒼、松岡広大、前原滉、渡邊圭祐 / 風吹ジュン / Torean Thomas、Brian Garcia、Dominic Power / Rick Amsbury、岡本多緒、酒向芳 / 夏川結衣、笹野高史 / 江口洋介ほか
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W97C ラインアップ
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