ジアイーノ 開発者の声
これまでになかった快適をつくった開発者たちの挑戦
2013年の業務用から生まれた、次亜塩素酸 空間除菌脱臭機 ジアイーノ 。
空気を丸ごと洗う という画期的なコンセプトで市場に新たなジャンルを築き、
家庭用、業務用ともに多くのユーザーに認められる商品となりました。
その誕生から現在へと続く道のりには、開発に携わる技術者たちの努力と、常識にとらわれない発想がありました。
誕生からこれまでの歩み
そして、更なる快適への挑戦は続く
開発・改良に情熱を注いだスペシャリスト
井浦 嘉和
パナソニック エコシステムズ株式会社
IAQビジネスユニット ジアイーノ事業ジア商品企画課
ジアイーノ の改良に関する企画、マーケティングを担当。お客様の声から次なるニーズを探り、開発担当者へアイデアを共有する、新型 ジアイーノ 開発の頭脳もいえる役割を果たす。
山田 哲義
パナソニック エコシステムズ株式会社
ジア推進室 ジア技術推進担当 主幹
基盤となる次亜塩素酸技術構築の推進を担当。商品開発とは別軸で、エビデンスを蓄積しながら技術に関する研究を促進。以前は商品開発担当として家庭用 ジアイーノ の開発や海外展開に大きな役割を果たした。
伊藤 泰典
パナソニック エコシステムズ株式会社
家電技術部 空間浄化機器開発課
ジアイーノ の機構の設計開発や品質評価を担当。2021年モデルでは、加湿機能を高めながらも、高い除菌・脱臭効果を実現するための機構開発を担当した。
業務用 ジアイーノ の開発
—「空気を洗う」というユニークな商品を開発するに至ったきっかけ、経緯を教えてください。
井浦:次亜塩素酸を活用した商品開発については、三洋電機でのものを含めて30年以上の実績があります。最初は1987年にカップ式自動販売機用の電解除菌装置から始まり、プールの水の浄化や洗剤の代わりに次亜塩素酸を使う洗濯機などに使われていました。もともと「水」を対象にした浄化技術だったのですが、研究を重ねる過程で「空気」の除菌・脱臭にも高い効果を発揮することがわかり、それが業務用の空間清浄システムに発展していきました。
一方パナソニックでは、広い空間で使用でき、プロも満足させるほどの高性能な業務用空気清浄機の開発が進められていました。風量やフィルターの改良だけでは十分な除菌・脱臭効果が実感できなったところに、経営統合した三洋電機から次亜塩素酸技術が入ってきたことで、その構想が加速。パナソニックとしての次亜塩素酸を活用した商品の研究が本格化したのです。
とはいえ、異なる2社の発想や技術を融合させるため、両社の文化や常識を一旦ゼロにして、新たなジャンルの商品として1から設計を組み立てる作業は困難を極めました。良いところまで進んでは、また戻るというような毎日…。2011年から始まった開発は、2年の歳月をかけて、2013年に業務用 ジアイーノ の誕生につながったのです。
家庭用 ジアイーノ、誕生
—業務用として開発された ジアイーノ を、家庭用商品としても展開することになった背景と、改良のポイントを聞かせてください。
山田:業務用 ジアイーノ が市場で認められるに連れ、その除菌脱臭力の高さの評判を聞きつけたお客様から「家庭用のものはありますか?」「家庭用として欲しいのだが、どこで買えますか?」という声が寄せられるようになりました。それに応えようと、2015年から家庭用 ジアイーノ の研究開発が始まったのです。
しかし業務用と家庭用とでは、商品に求められる機能やニーズが異なります。除菌・脱臭に関する本質的な性能は同じでも、サイズ感や使い勝手は大きく違う。そのギャップを埋めるための新たな要素の研究開発を進める必要がありました。
まず、もともと当社が長年研究開発してきた空気清浄機で活用されている、コンパクトでも風量が十分に確保できる本体構造を採用したのですが、そこに次亜塩素酸の発生に重要な要素である、電極の配置や塩タブを自動投入する機構の設計、また排水作業の手間を軽減する改良を施すことに苦心しました。
特に、排水の頻度を下げるためには、水の汚れの原因となる外部からのホコリをシャットアウトし、本体内の次亜塩素酸水溶液を極力清潔に保つ必要がありますので、新たに保護エレメントを設置。これにより、毎日必要だった排水作業を、週に1度にまで減らすことに成功しました。2年間の研究開発期間を経て、2017年に家庭用 ジアイーノ が発売されました。
厳しい目で効果を検証
—ユーザー目線で行われてきた機能向上もさることながら、 ジアイーノ が市場から支持される商品になった背景には、その効果の確かさがあるかと思います。それを実現するためのこだわりは何ですか?
井浦:私たちが一番重視しているのは、お客様に ジアイーノ を設置している空間の空気の質が変わったと実感してもらうことです。しかも、ご期待以上のレベルで、室内の空気の心地よさを感じてもらわなければならないと考えています。
伊藤:脱臭効果を測定する場合は、その効果の実感を評価するために人の嗅覚を用いた官能評価を採用しました。主に評価にはペットのニオイを擬似的に再現したサンプルを実験室に充満させ「ジアイーノがある部屋」と「ジアイーノ がない部屋」で比較します。また、ペットのニオイ以外も様々な生ごみや排水口からのニオイなど生活に密接に関係するニオイでの検証も進めております。
ジアイーノ の脱臭効果を測定する空質試験室(約6畳空間)
左の部屋には ジアイーノ を入れて脱臭。
ジアイーノ がない右の部屋と臭いの度合いを比較します。
ジアイーノ の付着菌の除菌効果を測定する約18畳の居室
伊藤:改良を重ねるたびに、実験室のみならず、お客様が実際に使用されるシーンに近い環境での効果測定を繰り返し行っています。高い除菌効果をお客様へ今まで以上にお伝えしたいという思いがあり、一般家庭の約18畳のリビングとほぼ同等の居室で家具も設置し、家庭用の換気設備を稼働させた中で、ジアイーノ がどれほどの除菌効果をあげているのか、データを測定しています。
IAQの向上を目指し、 ジアイーノ はさらなる高みへ
— ジアイーノ という、これまで世の中になかった画期的な商品を生み出し、育ててきた立場から、今後さらに多くのお客様に ジアイーノ をご利用いただくことで、社会にどのようなくらしを実現していきたいと考えていますか?
井浦: ジアイーノ はパナソニックが提唱するIAQ(Indoor Air Quality/室内空気質)を向上させるための一翼を担う商品です。水道水を当たり前のように飲んでいた時代から、より新鮮で安全な飲料水を買い求める時代へと変化したように、室内の空気についても、さらにこだわりを持つ人の割合は増えてくると思います。生命には欠かすことのできない空気に対する不安を和らげ、より健康的で快適な社会を創造することに、これからも ジアイーノ が貢献できればいいなと考えています。
空間全体でIAQを考える
パナソニックエコシステムズ株式会社では、業務用・家庭用 ジアイーノ の商品開発だけに留まらず、空気・水をメインに、光・音・映像までも連携し、非住宅空間の新たな体験価値を生み出す「空気質・水質」の空間ソリューションを提案する「Reboot Space」を開設。
ここでも ジアイーノ と同じ仕組みで生成された気体状の次亜塩素酸を放出できる設備機器のプロトタイプを設置し、パナソニックの次亜塩素酸生成技術が、未来の公共の場でどのように社会に貢献していけるのか、ビジネスパートナーと共に日々その可能性を追求しています。
山田:IAQに対する捉え方、ニーズは、時代とともに変化していくものです。私たち技術者はその流れをいち早くキャッチして、これまで積み上げてきた経験や知識をベースに、新たな機能開発につなげていきたいと思います。
伊藤:IAQというのは、感覚として体感することは可能ですが、実験室以外でそれを数値として実感することが難しいものでもあります。今後は、除菌や脱臭効果がお客様にも視覚化できるようなモデルを開発していきたいです。
井浦:IAQを広い視野から捉えると、ジアイーノ という家電商品が、今後は例えば住宅設備の一部として、天井などに埋め込まれた形で使用されるかもしれません。他の住宅設備とうまく連携することができれば、その効果は何倍にも高められることも期待できます。その可能性を考えると、開発者としてはワクワクしますね。
私たちはすでに30年以上、次亜塩素酸を研究し、それを効果的に活用するためのチャレンジを続けてきました。それでもまだ、次亜塩素酸の力を十分に使いこなせているのか、自分たちでも未知数な部分があります。それほど奥深い次亜塩素酸の世界を、これからも探求し続けていきたいと思います。